日観振、今年は人材育成とDMOを推進、山口会長は続投

日観振会長の山口氏  日本観光振興協会(日観振)は6月9日、都内で第53回の通常総会を開催し、2015年度の事業報告および決算の承認と、16年度の事業計画および予算の報告をおこなった。16年度の予算額は前年度の決算額より約5000万円多い6億4200万円。観光立国の実現に向け、魅力ある観光地域づくりと地域を担う人材の育成、日本版DMOの推進などに取り組む。この日は2年間の任期満了にともなう会長や常任理事などの改選もおこない、会長の山口範雄氏が3期目を務めることも決定した。

 山口氏は総会の冒頭で、「観光立国への新しいステージに入った今、地方活性化のためにも、インバウンドを各地域に波及させる必要がある」と説明。そのためには「観光資源の発掘から商品づくり、プロモーションができる人材の育成と、観光地域づくりや観光地経営ができる組織が不可欠」と述べ、日本版DMOを普及・定着させる必要があることを訴えた。

総会では、今年度の「観光振興事業功労者」12名の表彰式もおこなわれた  今年度に入り日観振は、人材育成、観光地域づくり、国際交流に関する3部署を新設。人材育成については「日本観光振興アカデミー」を、観光地域づくりでは「DMO推進室」を、国際交流では活動を一元化する「国際交流推進室」を設置した。山口氏は「これらを中心に、国、自治体、関係団体や幅広い産業と連携をはかり、迅速に業務を進めたい」と抱負を述べた。 

 さらに、山口氏は今年の課題として「事業の活性化」も掲げた。日観振や観光関連団体で構成する観光立国推進協議会については今後、「新たな観光事業を作り出す場として機能していくよう検討したい」としたほか、「ツーリズムEXPOジャパン2016」については「国内旅行、海外旅行、インバウンドの三位一体で新たな取り組みを展開する」とした。また、20年の東京五輪に向けた受入体制の整備では、観光ボランティアガイドの育成や多言語での観光情報発信などに取り組む考えを示した。

観光庁長官の田村氏  来賓として挨拶した観光庁長官の田村明比古氏は、「訪日外国人の増加で、旅行消費額は名だたる輸出産業と肩を並べるまでに成長した」と日本経済における観光業の重要性を強調。政府が3月に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」の実現に向けては、「旅行者目線で観光資源の魅力を高めること」「新たな市場開拓や世界水準のDMOの育成などにより、観光を基幹産業に育てること」「出入国審査や交通アクセスの改善などによるストレスのない観光環境の実現」の3つが必要と説明し、「各省からの施策を実施するため、3つの視点で政府一丸となって取り組んでいく」とした。

 総務省地域力創造審議官の原田淳志氏は、同省の施策として「20年までに、主要な観光地の無料WiFi整備に積極的に取り組む」と語った。