MSCクルーズが初の日本寄港、上海起点でアジア拡大

  • 2016年5月10日

博多港に寄港したMSCリリカ  MSCクルーズの客船「MSCリリカ」(6万5591トン、乗客定員最大2679名)が4月29日、博多港に寄港した。同社の客船が日本に寄港するのはこれが初めて。寄港中の船内で開催した記念式典で、MSCクルーズ日本支社長のオリビエロ・モレリ氏は「我々の長年の夢がかなった」と喜びを表した。

 同社の東アジアへの運航は今回が初めてで、ジェノバから上海までの41日間のロングクルーズの最終寄港地として寄港が実現した。式典では福岡市港湾空港局長の則松和哉氏が、MSCクルーズがアジア進出を検討してきた2008年から博多への寄港をアプローチしていたことを明かし、「長年の願いがかなった記念すべき日となった。この縁を大切にし、末永く良い関係を築いていきたい」と祝辞を述べた。

記念品を贈りあう船長のチロ・ピント氏と福岡市港湾空港局長の則松和哉氏 MSCリリカは5月1日から、中国のカイサ・ツーリスティック・グループによるチャータークルーズとして1年間、上海に配船。日本と韓国を訪れるショートクルーズを中心に運航し、1クルーズあたり2000名規模の中国人旅行者を連れて日本に寄港することになる。モレリ氏は式典後に本誌のインタビューに応え、MSCリリカが日本に寄港することについて「本物の船が来ることは、何よりも強力なマーケティングツール。日本での(MSCクルーズの)認知度向上につながる」と語り、日本でのフライ&クルーズ販売の後押しとなることに期待を示した。


▽20万トンクラスなど保有客船を倍増、日本発着検討も  

MSCクルーズ日本支社長のオリビエロ・モレリ氏 記念式典では、MSCクルーズが今後10年間で11隻の新造船を建造・計画中であることを紹介。現在の保有客船12隻と合わせ、23隻に倍増する。このうち、17年と18年には最先端のテクノロジーを搭載した次世代型客船「MSCメラビリア」(16万7000トン、乗客定員最大5714名)と「MSCシーサイド」(16万トン、乗客定員最大5179名)を就航。さらに20万トン超の「ワールドクラス」も4隻計画しており、総投資額は90億ユーロにのぼる。MSCクルーズではこの拡張戦略のもと、アジア市場でのビジネスを急速に拡大していく方針だ。

 インタビューでモレリ氏は、MSCクルーズとして日本発着クルーズの考えがあることを明かした。今後は客船の拡張計画を踏まえると、1、2隻をアジアに配船することが可能との見方で、日本発着クルーズが実現した場合、日本市場のみならず基盤である欧州からの訪日客の送客も十分な可能性があるとの考えだ。

 同氏によると、これまでMSCクルーズは各市場での「マーケットリーダー」を取る戦略で、基盤の地中海に加えて、長距離路線を利用したフライ&クルーズにより南米や南アフリカでもシェア1位の座を奪取してきた。米系クルーズ会社の主戦場であるカリブ海にも力を入れており、昨年に開始したキューバを起点としたクルーズは送客数1位となった。これらの実績により、欧州での人気が高い日本についても送客の可能性があると見る。

 なお、MSCクルーズ日本支社の送客数は年間約1万5000人で推移。送客数は大きく変わらないものの、FITがこの2年間で20%増加するなど、マーケットが変わってきているという。また、送客の約8割が地中海クルーズで、国土交通省の統計データによれば、これは日本人の地中海へのフライ&クルーズの40%以上を占める。クルーズ会社の多くが冬期はカリブ海など南半球へ配船するなか、MSCクルーズでは地中海に通年配船していることが大きいという。