日商、アクションプログラムに意見書、安全対策など強調
日本商工会議所(日商)は4月21日、国土交通省と観光庁に対して「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」の改定に関する意見書を提出した。3月30日に政府が策定した新たな中長期的ビジョン「明日の日本を支える観光ビジョン」のなかで具体的に示されていない施策や、早急に必要な取り組みについて、個別に具体的な要望をまとめたもの。政府が同ビジョンを踏まえた当面の取組策として、5月中を目途に取りまとめをおこなっている「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2016」への反映をめざす。
意見書は日商観光委員会共同委員長で東海旅客鉄道相談役の須田寛氏が、国土交通大臣の石井啓一氏と観光庁長官の田村明比古氏に手交。日商によれば、田村氏は手交に際し「意見書の相当部分を新たなアクション・プログラムに盛り込みたい」と述べたという。
意見書では「インバウンドの拡充発展」「国内観光の促進」「観光基盤の整備」「緊急に対応を要する事項」を4本の柱として列挙。意見書の提出後、国土交通省内で業界紙向けの記者会見をおこなった須田氏は、そのなかでも特に安全対策についてまとめた「緊急に対応を要する事項」の重要性を強調した。「緊急に対応を要する事項」では、大規模災害などの発生後の訪日外国人旅行者の安全と確実な帰国の支援に加え、災害時における交通や宿泊などの安全確保、危機管理体制の強化、的確な災害情報発信システムの整備などについて日商としての考えを取りまとめている。
須田氏は14年10月に発生した御嶽山の噴火を振り返り「(日本人観光客への)危機管理体制はできあがってきているが、訪日外国人旅行者を守る準備が驚くほど進んでいない」と指摘。今月14日から熊本などで発生している一連の地震にも言及し、「あの規模の災害が休日の昼に発生したら、こんなものでは済まない」と危機感を示し、「(訪日外国人旅行者の)誘致をおこなっている以上、彼らの安全を守らなくては」と語った。
意見書ではそのほか、引き続き訪日外国人旅行者の誘客強化に向けて、ビザ発給の要件緩和やCIQ体制の整備・強化、宿泊施設の拡充などを要望。電線類の地中化など景観の改善・保全に向けたまちづくり、観光資源の拡充、交流拠点都市としての「観光特区」の指定と広域観光圏の形成、通訳案内士や旅行業などに関する規制緩和、訪日旅行を扱うツアーオペレーターの質の向上なども求めた。
須田氏は「明日の日本を支える観光ビジョン」で示された、2020年の訪日外国人旅行者数を4000万人に引き上げる新たな政府目標について、「訪日外国人旅行者数は確かに過去3年間で1000万人から2000万人に倍増したが、これをさらに4000万人にまで倍増させるとなるとまったく次元が違う」とコメント。「大変な努力が必要となるが、民間の力だけでは達成は難しいので、政府の支援と指導が必要」と協力を求めた。
また、4000万人のうち2300万人をリピーターにする目標については、「宿泊施設と観光資源の拡充が不可欠」と指摘。中長期的ビジョンにおいて文化財など公的施設の開放が打ち出されたことについては「大きな効果が期待できる」と喜びを示した。