上期の海外旅行、需要の早期取込に注力-ホールセール特集(1)

  • 2016年3月24日

仕入環境の変化を踏まえ、代金変動型商品が登場
特典強化で早期予約を取込

羽田空港国際線旅客ターミナル(2月20日10時頃撮影)  大手ホールセラー各社は先ごろ、2016年度上期の海外募集型企画旅行商品の販売を開始した。訪日旅行市場が急拡大し、国内旅行市場も堅調に伸びている一方で低迷が続く海外旅行市場では、旅行者のFIT化や、インターネット商品など安価なツアーの需要増も進んでいるが、海外旅行市場の回復に向けてはやはりパッケージツアーの復活が欠かせない。各社が顧客獲得のために訴求力の高い商品造成に知恵を絞るなか、その内容と方針をまとめた。


ルックJTBはリスク恐れず商品造成、代金変動型も導入

JTBWVの井上氏  JTBワールドバケーションズ(JTBWV)社長の井上聡氏は、16年度の商品発表会見で、商品造成における「リスク」として、航空機のチャーター、定期便の座席やホテルの客室の買い取りを挙げた上で、「自らリスクをとって商品造成を進めていく」と意気込みを示した。

 背景には、訪日旅行市場の急拡大や、海外デスティネーションでの国際間の競争が厳しさを増していることで、ホテルの客室の確保が難しくなっていることがある。これは旅行会社各社に共通する課題だ。さらに、日本旅行東日本海外旅行商品部部長の阿部公宣氏によれば、機材の小型化やプレミアムエコノミークラスの設定などにより、「パッケージツアー向けにエコノミークラスを提供してもらいにくい状況が強まっている」傾向もあるようだ。

 そうしたなか、JTBWVでは新たに、基幹商品の通称「黄色パンフレット」で取り扱う添乗員が同行しない個人型ツアーで、申込時期によって価格が変わる「旅行代金変動型商品」を導入した。

 旅行代金は2ヶ月ごとに市場環境などを考慮して変更。外的要因などは除き、原則として早期の予約であればあるほど安くなるように設定し、その都度パンフレットも差し替える。こうしたイールドマネージメント的な取り組みは、紙のパンフレットでは難しいと考えられてきたが、JTBWVではこうした対応により「ホールセールの革新に挑戦していく」(井上氏)考え。

首都圏営業本部部長(海外担当)の神谷氏 JTBWVの新しい動きに対して、近畿日本ツーリスト個人旅行(KNT個人)首都圏営業本部部長の神谷新平氏は、「各社が影響されて市場が動くのではないか」との見方を示す。一方、「我々も旅行商品を早めに市場に提供していく考えは変わらないが、ニーズの高まる時期は旅行会社が決めるわけではない」とし、早期と適正な時期の両方における取り込みの努力が必要との考えを示した。