農協観光など4社が連携協定、食と農で訪日旅行など推進

  • 2016年3月9日

(左から)農協観光代表取締役社長の藤本隆明氏、ABC Cooking Studio代表取締役社長の櫻井稚子氏、農林中央金庫常務理事の山田秀顕氏、リクルートライフスタイル執行役員の宮本賢一郎氏  農協観光、リクルートライフスタイル、農林中央金庫、料理教室を運営するABC Cooking Studioの4社は3月9日、包括的パートナーシップ協定を締結した。農林中央金庫を中心に業種の異なる4社が「食」と「農」をテーマに連携し、旅行者増による地域活性化と海外への農産品輸出などに取り組むもの。農山漁村でのグリーンツーリズムを軸に、訪日旅行と国内旅行の両方で地方創生に向けた活動を推進する。このうち農協観光は、地方での農業体験や田舎暮らし体験を盛り込んだ訪日外国人旅行者向けモニターツアーなどを開始する。

 同日に開催した発表会見で、農林中央金庫常務理事の山田秀顕氏は、グリーンツーリズムの交流人口が年々増加傾向にあり、都市住民の農山漁村などへの関心が高まりつつあること、訪日外国人旅行者の間でも農漁村体験などへの期待が増していることを、各種の調査結果などをもとに説明。今後は農家民宿などを含む体験料の収受、土産物の販売、ソーシャルメディアなどによる交流などにより、訪日外国人旅行者と国内旅行者との両方の訪問による経済効果の増大が見込まれるとした。

 今後、農協観光は地域に根ざしたツアー商品やプログラムの企画と販売など、リクルートライフスタイルは「じゃらんnet」の活用などによる、宿泊施設の販売体制や調査活動の強化など、ABC Cooking Studioは国内外の料理教室会員の地域への招致などに取り組む。農林中央金庫は国内外のネットワークを活かし、JAグループの「農業所得増大・地位活性化応援プログラム」に基づき3社をサポートする。山田氏は「4社がノウハウを活かして連携し、地域の魅力を感じられる取り組みとしたい」と強調。数値目標などについては、当面は非公表とした。

 同事業では、訪日旅行については2016年度から「インバウンド誘客モデル地域」の選定を開始。まずは16年度内に首都圏と関西圏において、複数の都道府県にまたがる「モデル地域」を選定し、3年以内には全国の7ヶ所程度に拡大する。あわせてモデル地域で、農村体験プログラムなどを含む3泊4泊程度のモニターツアーの催行を開始し、ABC Cooking Studioの会員などで情報発信力のある人物を招聘。モニターツアーを重ねて各地域の受入体制を強化し「着地型モデルコース」を造成するという。国内旅行についても、地域の生産者や観光施設、商店街などとの連携を強化し、地域の魅力の向上に努めて旅行者増をめざす。

農協観光の藤本氏  農協観光代表取締役社長の藤本隆明氏は、今年の4月にもモニターツアーを開始する考えを表明。あわせて「モニターツアーだけでは終わらない」と強調し、受入体制が確立された地域については、早期に旅行商品の造成や販売を開始したい考えを示した。同社によれば、農協観光の15年度の訪日旅行の売上高は前年比5割増の約20億円にまで拡大する見通し。総売上高に占める割合はまだまだ小さいものの、今後もオーストラリアやマレーシア、シンガポールなどの市場を中心に、注力を続けるという。

 そのほか、会見ではリクルートライフスタイル執行役員の宮本賢一郎氏が「じゃらんnet」の宿泊施設や体験プログラムなどの予約プラットフォームの活用や、位置情報調査や観光消費額調査などによる調査・研究活動、地域の自治体および事業者への誘客施策提案などを展開する考えを表明。広域での周遊観光を促し、滞在時間と消費額の増大をはかる考えを示した。

 ABC Cooking Studio代表取締役社長の櫻井稚子氏は、同社がアジアの6ヶ国8都市で16軒の料理教室を開校していることを説明した上で、「訪日モニターツアーなどで日本の食材のファンが増えれば、継続的な食材の購入にもつながる」と説明。越境Eコマースによる外国人向け土産品販売などの展開に意欲を示した。