JTB、地方創生事例研究会を初開催、食農観光の連携など紹介

  • 2016年2月17日

JTB旅行事業本部の鹿野氏  ジェイティービー(JTB)はこのほど、自治体向けのセミナー「地方創生事例研究会」を初開催した。自治体などによる地方創生の政策推進や事業の立案のモデルを示すためのもので、地域社会が抱える課題のなかから定住人口や交流人口の増加、食農観光の3つのテーマを取り上げ、自治体とJTBが協力して展開する地方創生に関する事業を紹介。このうち食農観光では、JTBグループが展開する「食農観光連携プロジェクト」に関するプレゼンテーションをおこなった。

研究会は定員150名に対して400名を超える応募があったといい、注目度の高さが伺えた  進行役を務めたJTB旅行事業本部観光戦略担当マネージャーの鹿野英克氏は冒頭、同プロジェクトについて「地元の食や農業を地域の観光資源として捉えて魅力を高め、食べてもらい、その地域を訪れてもらう好循環を生み出す仕組み」と説明。地域と協力して「人づくり」「もの・ことづくり」「場づくり」の3つを連携して展開することで、交流人口の拡大と豊かな地域づくりをめざすとした。

 「人づくり」の取組事例として、JTB九州コミュニケーション営業部地域共創戦略室グループリーダーの占部泰洋氏は、同社が2015年8月から16年1月まで5回に渡り、熊本県山都町で農業従事者を対象に開催した「食農観光塾」について紹介した。食農観光塾は食農観光に携わる地域のリーダーとなる人材の発掘と育成をおこなうもので、カリキュラム修了後も継続的な事業の推進をめざす。観光業のノウハウを持つJTB九州と、農業専門のコンサルティング会社であるアグリコネクトが連携して農業支援をおこなったことが特徴だ。

橋本農園の橋本龍生さん  食農観光塾の参加者である橋本農園の橋本龍生さんは、取り組みを通じて「意欲的な仲間と出会い、農業をベースに食や観光など複合的に物事を見ることができた」と述べた。橋本さんのグループでは5回のカリキュラムを通じて、山都町が抱える鳥獣被害や耕作放棄地の問題を同時に解消する事業計画「かぐや猪」を立案。被害の原因となっているイノシシを耕作放棄地で飼育し、ジビエ料理に利用することで新たな町の産業を創り出すもので、地元の農家から出る出荷できないB級品の野菜に加え、肉の臭みを取るために竹粉をエサとして使用し、他地域の取り組みとの差別化をはかっているという。今後は「かぐや猪」をブランド化して山都町の特産品として販売するほか、研修や視察、観光にも有効活用していくという。

 また、「もの・ことづくり」と「場作り」の一連の取組事例について、JTB西日本法人営業大阪支店食農海外販路支援室部長の西川太郎氏が、同社が15年11月から開始した食を活用した地域振興事業「J's Agri」を紹介。同事業では海外に訴求できる日本の農林水産物を発掘し、インターネットで海外に向けて販売することに加え、訪日外国人旅行者向けに着地型旅行商品の造成と販売をおこなっている。

白岩恒美農園ブレンドファームの白岩千尋さん  京都府京丹後市にある白岩恒美農園ブレンドファームの白岩千尋さんは農家から農業への転換をはかるため、昨年11月から「J's Agri」との連携を開始。現在は、梨やいちごを香港へ販売する一方、季節にあわせて産地を巡る訪日外国人旅行者のツアーを受け入れている。今後は香港のほか、シンガポールやマレーシアに向けた商品の販売およびツアーの受け入れも視野に入れるという。白岩さんは「農業をおこなっていくためには農業者だけでなく、民間企業との連携が必要」と述べ、「生産・販売・企画・連携を組みあわせておこなうことで地方創生モデルが生まれ、新たなビジネスが創出される」と強調した。