ベルギー、回復に向け旅行会社と関係再構築、3観光局一体で

1月19日午後4時半ごろのグランパレス。右側のインフォメーションセンターの前には銃を構えた警察官が警備をしていた  日本旅行業協会(JATA)は1月19日、ブリュッセルでベルギー・フランダース政府観光局、ブリュッセル市観光局とのミーティングを実施した。JATAが14日から20日まで実施した、フランスとベルギーの視察旅行の一環としておこなったもの。ベルギーはテロリストの潜伏先として報道され、同国国家安全保障評議会はテロの警戒レベルを上から2番目の「レベル3」に引き上げている。

 ベルギー・フランダース政府観光局CEOでヨーロッパ観光委員会(ETC)会長のピーター・デ・ウィルデ氏は、11月13日のパリでの同時多発テロ事件以降、ベルギーを訪れる外国人旅行者のうち、日本人旅行者が最も減少していることに懸念を表すとともに、今年は日本とベルギーの外交・友好関係樹立150周年で、さまざまなイベントが用意されている旨を説明。「日本の旅行業界と協力体制を再構築して、改めて旅行需要喚起をはかりたい」と述べた。

 ベルギー・フランダース政府観光局CEOで、ヨーロッパ観光委員会(ETC)会長のピーター・デ・ウィルデ氏 これに対し、JATA副会長の菊間潤吾氏は、「ベルギーを含む欧州は我々にとって最も大切なデスティネーション。一刻も早い回復が求められる」と強調。150周年をフックに、チャーターなどの実施も視野に入れながら、旅行業界として回復に向けた取り組みを強化する姿勢を示した。

JATA副会長の菊間潤吾氏 同氏によれば、現在ベルギーを訪問するツアーのキャンセルが相次いでおり、ハイシーズンの4月と5月の予約は前年から5割減少。旅行会社からは、新聞広告を減らす、ベルギーで毎年開催しているイベントを中止する、といった消極的な動きなども出ている。

 こうしたなか、菊間氏はベルギーの観光行政がベルギー・フランダース政府観光局、ワロン・ブリュッセル観光局、ブリュッセル市観光局の3つの観光局で構成されていることについて触れ、3局が協力した「オールベルギー体制」で、回復に取り組む必要性を強く訴えた。さらに、ベルギー首相や、日本人がよく訪問するブリュッセル、アントワープ、ブリュージュ、ゲントの各市長の連名で、日本人を歓迎するメッセージを出すことや、旅行会社の販売意欲を高めるためのインセンティブの提供を求めた。

観光局とのミーティングの様子。日本側からは欧州現地の旅行会社やランドオペレーターも参加した  これに対し、ウィルデ氏は「昨年12月初頭に3つの観光局で緊急会議を開き、ともにこの危機に対応することで合意した」と説明。今後はETC会長でもある同氏がベルギー側の窓口となり、3局間の調整を進めていくとともに、メッセージの発出についても関係各所に働きかけていくとした。加えて、春や夏のツアーの販促策として、旅行会社に対し、シティーカードやコンサートの割り引きまたは無料提供などを検討する考えを表明。日本人向けの貸切観光や、貸切オルガンコンサートの開催のサポートについても意欲を示した。

 さらに、ETCとして「日本オフィスの復活を検討している」とコメント。現在、アジアでは中国にのみオフィスがあるが、近日中にボードメンバーのミーティングで検討の俎上にあげる予定だという。


▽主要観光地のセキュリテイ強化、「目に見える安全」アピール

(右から)ベルギー連邦公共サービス内務・危機管理センター長官のアラン・ルフェーブル氏、JATA副会長の菊間潤吾氏  JATAの視察団は同日、ベルギー連邦公共サービス内務・危機管理センターを訪問。同センター長官のアラン・ルフェーブル氏は、国民が通常通りの生活を送っている旨を説明した上で「ベルギーは観光客にとって十分安全な状況になっている」と強調。欧州域内を中心とした他国と情報交換などで連携し、テロを未然に防ぐ措置を強化しているとし、「必要な対策はすべて実施している」と語った。

1月18日19時ころのグランパレスに面したチョコレート店の前。日が落ちてからも人通りは多い  現在、国家安全保障評議会はベルギーの脅威度レベルについて、4段階中2番目に高い「レベル3:テロの可能性があり、発生し得る」と指定している。こうしたなか、同センターでは昨年のパリでのテロ事件発生後、監視カメラと各地を警護する警察官や軍人の数を増やした。

 ルフェーブル氏は「市民や観光客に見えるように警察官や軍人を配置し、彼らが『守られている』と安心感を覚えるようにした」と説明。ブリュッセルでは、広場「グランプラス」などの主要な観光地やショッピング街、公共交通機関に覆面警官を含む警察官や軍人を配置しており、ブリュッセル旧市街の中心部だけで250台の監視カメラ、400名の武装警官、120名の軍人を配置したという。今後は対策を引き続き実施するとともに「可能な限り早く、脅威度レベルを引き下げたい」考えだ。

 また、同氏は同センターのウェブサイトで最新の情報を提供している旨を説明。旅行者に対しては「世界中でテロの脅威があるなか、情報を収集し注意事項を確認するなど、自衛する姿勢を持って欲しい」と呼びかけた。