軽井沢でスキーバス転落、死者14名に、立入調査で詳細究明
長野県軽井沢町で1月15日午前2時頃、国道18号線の碓氷バイパス入山峠付近を走行中の貸切バスが対向車線をはみ出し、ガードレールを突き破って崖下に転落した。国土交通省によれば同日17時の時点で、乗客乗員41名のうち乗員2名を含む乗客14名が死亡し、27名が負傷。乗客の大半は10代または20代の若者だった。スキーツアーは東京都渋谷区に本社を置く第2種旅行業者のキースツアーが催行。東京都羽村市のバス事業者のイーエスピーが運行を担っていた。
15日午後に記者会見を開いた同省と観光庁によれば、バスは14日の23時に東京から長野県の斑尾高原に向けて出発。事故の発生を受けて同省は、未明に国土交通大臣の石井啓一氏を本部長とする「軽井沢スキーバス事故対策本部」を設置したほか、キースツアーに参加者の安否確認などを指示。12時には「事業用自動車事故調査委員会」に調査を要請し、あわせてイーエスピーの立入調査も開始した。運行管理者の指示に反するルート変更などの有無、運転手の健康診断や適正診断の実施状況などを調査する。
イーエスピーはバス7車両を保有。このうち事故車両は02年10月に登録されたもので、同省によれば「特段に古い車両ではない」という。ただし、昨年2月に東京運輸支局が実施した一般監査では、運転者の健康状態の把握や点呼の実施などが不適切だったことが発覚し、今年の1月13日付で1車両を20日間使用停止とする処分を受けていた。なお、偶然にも事故が発生した1月15日が、処分期間の初日だった。
キースツアーは、長野県や新潟県などへのバスによる価格訴求型スキーツアーを扱う旅行業者。設立時期は10年4月で、過去に処分の対象になったことはないという。同社は事故発生後にはTwitterの公式アカウントで謝罪するとともに「必ず誠意を持った対応をいたします」とコメントを発表している。同社が11年に3月に正会員として入会した全国旅行業協会(ANTA)は、本誌の取材に対して「現在は情報が錯綜しており、具体的な対応については落ち着いてから検討したい」と答えた。
15日夕方には東京都観光部担当者などが、同社への立入調査を開始。観光庁担当者も同行し「無理な発注などがなかったか」調査するとしている。同庁によれば、今後はキースツアーとイーエスピーの間でバスを仲介した旅行会社のトラベルスタンドジャパンについても、立入調査を検討する考え。観光庁は15日中に、日本旅行業協会(JATA)とANTAに対して、安全確保の徹底を求める事務連絡を発出するという。
国交省によれば、死者数が10名を超えたバス事故は、1985年に長野市の国道のカーブでバスがガードレールを破って転落し、25名が死亡した「犀川スキーバス転落事故」以来。そのほか近年の主なバス事故としては、2012年に群馬県の藤岡ジャンクションで、高速ツアーバスが走行中に道路の左側壁に衝突して7名が死亡した「関越道高速ツアーバス事故」などがある。