関空運営権、オリックス連合が優先交渉権者に、4月運営開始へ
新関西国際空港は11月10日、関空と伊丹の空港運営権売却の優先交渉権者として、オリックスやフランスの空港運営大手ヴァンシ・エアポート社などからなるコンソーシアムを選定したことを明らかにした。2016年3月末に運営権を移管し、4月から同コンソーシアムが両空港を運営する見通し。契約期間は60年3月31日までの44年間となる。同社代表取締役社長の安藤圭一氏は同日に開催した発表会見で、年内には基本協定や実施契約の締結を済ませ、3月末の運営権移管に向けた手続きを着実に進めたい考えを示した。
優先交渉権者となったのは「オリックス、ヴァンシ・エアポートコンソーシアム」で、代表企業のオリックスと主要構成員のヴァンシ・エアポート社に加えて、関西に拠点を置く銀行、建設会社、鉄道会社、インフラ関連企業など30社が名前を連ねる。旅行業界からはジェイティービー(JTB)が参画する。オリックスとヴァンシ・エアポートは、新関西国際空港との基本協定を締結したのち、運営権者となる合弁会社を設立する予定で、両社がそれぞれ株式の40%を保有し、残り20%はその他の企業が保有する。
同コンソーシアムが提示した事業計画では、航空系事業についてはマーケティング機能の強化やインセンティブの見直しなどによる戦略的料金設定で、さらなる路線誘致やLCCなどの拠点化促進をはかる考え。商業事業では、訪日外国人旅行者の需要にあわせた店舗の誘致や、ターミナルのレイアウトの見直しなどで収益増をめざす。伊丹のターミナルビルについては改修を引き継ぎ、ビジネス客の需要に対応できる迅速かつ効率的な店舗運営を進めるという。
そのほかには、搭乗手続きの効率化などオペレーションの最適化にも取り組む。空港機能の向上に向けた設備投資の総額は約9448億円を予定し、1年間の平均額は約215億円。従業員の質については「ヴァンシ・アカデミー」のトレーニングプログラムを活用して向上させる。各事業の詳細については数ヶ月以内に発表するという。
新関西国際空港は選定にあたり、着実な成長が期待できること、長期にわたり安全と安心感を最優先していること、機能強化のための投資やイベントリスク対策などで安定した経営を確保する内容となっていることなどを評価。「関西の航空需要の拡大に貢献し、日本の産業や観光などの国際競争力強化、関西経済の活性化に寄与する」との見方を示した。
2059年度の発着回数の目標は、14年度比で約40.8%増となる39.0万回で、そのうち関空は79.6%増の25.5万回、伊丹は14年並みの13.5万回。旅客数は65.9%増の5751万人で、そのうち関空は107.2%増の4153万人、伊丹は9.3%増の1598万人をめざす。貨物量は122.1%増の194.1万トン。営業収益は67.6%増の2509億円で、EBITDAは82.6%増の1209億円を掲げた。営業収益とEBITDAは運営権売却後も新関西国際空港に存続する鉄道事業分を除いたもの。
運営権の移管後、同コンソーシアムは新関西国際空港への対価として、44年間にわたり毎年490億円超を支払うほか、収益が1500億円を超過した場合にその3%分を株主に還元可能な資金の一定範囲内で支払う。また、移管にあわせて保証金として1750億円超を支払う。運営会社の総調達額は2600億円となる予定で、うち800億円を株主からの拠出でまかなうという。