OTAの台頭や訪日客の増加で旅館の対応に変化-WIT Japanより

  • 2015年7月30日

ネット販売や受入体制について議論
旅館と地域の協業も

訪日客の受入環境整備
地域での消費促す取り組みも

「紅鮎」3代目館主の山本享平氏 パネルディスカッションでは、増加傾向にある訪日客の受け入れについても意見が交わされた。日本政府観光局(JNTO)によると、2014年の訪日客は前年比29.4%増の1341万3467人となった。2015年1月から6月の累計でも、すでに51.8%増の913万9900人と急成長している。

 蘇山郷によると、同館の訪日客の比率は約3割。永田氏は、今後日本の人口の減少や訪日客の増加により、オリンピックまでにこの比率が5割まで高まると見込む。こうした現状をふまえ、同館では増加する訪日客への対応を強化している。永田氏は「基本的に館内では外国人だからといって特別扱いはしないが、ベジタリアンの食事などはリクエストに応じて提供している」とした。

 また、蘇山郷がある阿蘇に長期間滞在してもらい、地域での消費を促すための訪日客の受入環境の整備にも力を入れているところ。その一環として、地元商店街と共同で内牧温泉街の飲食店のメニューを5ヶ国語で紹介するウェブサイト「ふらっと内牧」を開設した。さらに同館では、1泊朝食付きのプランも提供し、滞在者が地域で過ごす時間を増やすための工夫をおこなっているという。

 加えて、同氏は通信環境の整備にも力を入れており、7月からSIMカードの無料貸出サービスを開始したことを紹介した。SIMカードは観光庁、阿蘇温泉観光旅館協同組合、および取り組みに賛同した宿が共同で購入したもので、阿蘇に宿泊、滞在中であればどこでも使用可能という。永田氏は「ソーシャルメディアなどで発信された阿蘇の情報を見た人が、新たな宿泊者となることを期待している」と語った。今後、宿泊者に写真や動画で発信してもらうため、阿蘇でのアクティビティの整備にも重点的に取り組む考えだ。

  一方、紅鮎の場合、宿泊者のうち訪日客の占める割合は1%未満で、月に2組から3組。しかし、今年の4月は桜シーズンの京都の宿泊施設不足もあってか、年間の件数を上回る40組が訪れたという。山本氏によると、紅鮎のスタッフは訪日客の宿泊者に対して楽しそうに対応はしているが、「日本人だと説明しなくてもいいことを(訪日客には)説明しなくてはいけない」など、慣れない対応に困惑する場面もあるという。そこで、山本氏は訪日客に日本の旅館を理解してもらうため、旅館共通の用語辞典を外国語で作成する取り組みを進めていることを紹介した。