貸切バス新制度を語る 西村昌之さん(名鉄近鉄旅行・バス両社社長)(1)

 昨年、貸切バスの新しい運賃・料金制度が導入されて、各地で制度に関する意見が活発化している。いよいよ4月から新料金による旅行代金の設定が必須となる。名阪近鉄バスと名阪近鉄旅行の社長を務める西村昌之さんにバス会社と旅行会社、2つの立場からこの制度への考えを聞いた。

 価格競争からツアーの質向上の時代へ

-貸切バスの新運賃・料金制をどのように捉えていますか。

 心配したほどマイナスではありません。逆に当社の旅行会社は昨年よりプラスになっています。大手旅行会社も国内旅行はいいようです。消費税アップやバス料金の値上げといったマイナス面よりも、今の日本人の感覚はプラス志向になっているような感じがします。

 とはいってもあくまでもこれは感覚、雰囲気なので、すぐに冷えます。需要の広がりではありません。旅行は余暇です。お金や時間が余った分で我々のところへ振り向けてもらっているだけで、余裕がなくなった気分になると財布の紐は括られてしまいます。そのためにも一度、つかんだお客様を引きとめる工夫を今のうちにしておかなければならないと思います。よほどのことがない限り、どこかで誰かは旅行されるのですから。

 話を貸切バスの新運賃に戻すと、数年前中小旅行会社の経営者と話をした時、バス事業者はバス代をもっと上げてくださいと言われたことがあります。バスを手配してもバス料金が安すぎてマージンが取れないというわけです。そういった意味でこれまでバス料金を低く設定しすぎていたところもあるのは事実です。

 西村昌之さん

-旅行会社の皆さんはバス料金の値上げによってバスツアー料金がアップし、ツアーに参加する流れが止まることを心配されているようです。

 2年ほど経てば新料金に消費者も慣れて需要は元通りになるという見方もありますが、それを信じていいのかどうか。バスツアーそのものが減少してしまうことを懸念されている人が多いようです。

 私自身、新運賃・料金制については前向きに捉えようと思っています。これまでの我々の業界を振り返ると値引き合戦の繰り返しの歴史です。正しい値引きならいいと思いますが旅館や施設、バス料金を値引いて安売りするだけなら、自分たちの首を絞めているだけです。質を下げた安売りは意味がありません。

 安売りは他の業界でもいろんな問題を起こしてきました。食品の問題にしてもこの影響が大きいと思います。ですからこれを機会に適正な価格に戻し、お客様にも単価は上がりますが質の高い商品を提供いたしますと伝えていけばいいのではないでしょうか。金額に見合った質の向上をしようということです。

 我々のところでもカッコーツアーで安い料金設定にしているところは金額が上がれば影響が出てくるので、担当者から懸念する声は聞いています。しかし安いツアーを造成できたのはバス運転手の給料を抑えてきたからです。新料金になったからといってすぐに給料を上げることはできませんが、そのあたりのバランスをとっていかないと生き残っていけません。


情報提供:トラベルニュース社