JNTO、VJ事業移管で中計変更へ-年間の商談支援2万件など

  • 2015年3月5日

挨拶するJNTO理事長の松山良一氏(右)と、観光庁次長の山口裕視氏 国土交通省は3月5日、第22回の「独立行政法人評価委員会国際観光振興機構分科会」を開催し、日本政府観光局(JNTO)の第3期中期目標と中期計画の変更について審議した。2013年12月の閣議決定により、これまで観光庁が実施してきた訪日プロモーション事業「ビジット・ジャパン事業(VJ事業)」などが、今後はJNTOが主体となって実施することを受け、2013年度からの5ヶ年の目標と計画を見直すためのもの。この日はJNTOが予算増を受けた海外事務所の重点化方針や数値目標などの変更案を示し、特段の異論は見られなかった。中計は3月中に変更される見通し。

 会議の冒頭で挨拶したJNTOの理事長の松山良一氏は、「JVの実施主体がJNTOとなり、責任の大きさを実感している」と発言。観光庁次長の山口裕視氏は、「今後はJNTOはさらに大きな役割を果たさなくてはならない。その拠り所となる中期目標と中期計画をふさわしいものに変えていく」と延べ、活発な議論に期待した。

 この日にJNTOが示した変更案では、冒頭の「基本的な考え方」で、2020年までに年間訪日外国人旅行者数2000万人の実現をめざす政府目標について明記。これまではVJ事業の「監督」業務を担っていたJNTOが、今後は事業の執行機関として「中核的な役割」を果たすとし、海外でのニーズに応じた迅速な意思決定をおこなえるよう、「予算や人員などの経営資源を海外事務所に重点的に配分する」とした。

 訪日旅行商品の造成および販売支援に関しては、これまでの目標では、中計期間中にJNTOが支援した商談により、旅行会社が造成した商品で訪日した外国人旅行者の目標数として年間90万人を設定していたが、今後の目標としては、JNTOが提供する商談の目標件数として年平均2万件以上を設定。一方で、商談参加者への調査において「商談の評価が4段階中の上位2つを得る割合が7割以上となる」ことをめざすとし、商談の質についても向上をはかるとした。

 国際会議などの誘致と開催支援については、JNTOが誘致に成功した国際会議などへの外国人参加者予定数を10万2000人としていたところを、「商談件数を年平均1700件以上」に変更。旅行商品と同様に商談の質の向上をはかることについても目標に掲げた。

 しかし、これらの変更については出席委員の一部が、特に国際会議の誘致について、目標の方向性を「結果」から「過程」へと変えたことに疑問を呈した。これに対しJNTO側は、国際会議の誘致活動に要する期間が長いことなどから、1年単位での目標の設定が難しい旨を説明。また、他の委員からも「結果だけでは見えにくい部分がある。過程や(結果までの)タイムラグなども勘案すべき」といった意見が挙がり、最終的には、2013年の「日本再興戦略」で掲げられた目標「2030年にはアジアNO.1の国際会議開催国としての不動の地位を築く」を盛り込むことで合意した。

 国民に提供するサービスなどの質の向上については、事業パートナーに対して実施する個別コンサルティング件数の目標を、現況を踏まえて年間1500件以上から3000件以上に引き上げた。また、従来はJNTOウェブサイトへのアクセス数の目標を年間6億ページビューとしていたが、Facebookなどの浸透を受けて、今後は「JNTOのSNSページのファン数を500万人に、JNTOウェブサイトのアクセス数を年間4億5000万ページビューに」するとした。

 そのほか、観光案内所の情報提供件数に関する目標についても数値を上方修正。また、内部統制の強化に向け、外部有識者の意見も踏まえて課題の改善に務めること、内部監査の結果に基づいたフォローアップをおこなうことも示した。

 今後は、議論を踏まえて調整した変更案を、独立行政法人評価委員会の意見として財務省などに報告。同省の承認を得たのち、3月中旬には中期目標が変更され、続いて下旬には中期計画が変更される予定だ。