アクセスランキング、1位は燃油の実質値上げ-関空/釜山開設も

[総評] 今週の1位は、日本航空(JL)の燃油サーチャージについての記事でした。燃油価格の下落によって見た目の燃油サーチャージ額は大きく下がったものの、設定額の基準を変えたことで、本来は「もっと下がった」はずのものがそうはならなかったという内容です。

 他のメディアが表面上の値下げばかりを取り上げたため、もしや読み誤って間違ったことを書いたかと少し不安を覚えもしましたが、結果的にはアクセスランキング1位の記事の平均的なアクセス数と比べて3倍程度の注目を集めました。

 日系2社についていえば、シンガポールケロシンの2ヶ月間の平均価格が60米ドルを切れば燃油サーチャージがゼロになる、これは旅行業界の共通認識であったはずで、先般の原油価格動向からそろそろそれが実現すると大いに期待されていました。

 しかし、今回の措置はその期待をほぼ打ち砕くものです。60米ドルが下限であったところを6000円と円建てにした結果、為替レートを1米ドル119円として計算すれば50.42米ドルまで下限が下がったことになります。為替レートの激変への対応だとすれば、それは燃油サーチャージではなく「為替サーチャージ」でしょう。

 1米ドルあたり100円で基準を書き換えた根拠は何なのか、なぜこの円安局面でこの判断なのか、そして消費者にとって少なくとも短期的には間違いなく不利益であり、はっきり言ってしまえば欺瞞的とすら思える決定を経営陣がなぜ認めたのか、さっぱり分かりません。

 そもそも2社が同じ基準、同じ設定額であることも理解に苦しみます。トラック業界でも「燃料サーチャージ」が導入されていますが、国土交通省によると、「燃料価格の上昇・下落によるコストの増減分を別建ての運賃として設定する制度」だそうです。

 航空会社も同じ理屈なはずですが、燃油が直接関わるところだけで路線が違えば機材も違う、燃油調達の仕組みも違うはずの2社であるのに、なぜ「(燃油)価格の上昇・下落によるコストの増減分」の一部を補う燃油サーチャージの額が一緒でなくてはならないのでしょうか。

 今回の件では、原油価格の下落を受けてフィリピン政府が燃油サーチャージの廃止を決めたり、エアアジア(AK)グループが燃油サーチャージを廃止したりしたのに対して、そうした動きが日本にも波及することを嫌う意思が存在するのではないかと勘ぐってしまいます。

 あるいは、日本旅行業協会(JATA)会長の田川博己氏が「制度そのものを根本的に覆すことはなかなか難しい」ので、「制度の運用について、消費者に不利になるような手法は厳に慎むべき」と訴えていく方針を示されている中で(リンク・2ページ目)、実は制度を変える布石だったというようなことはないかと出鱈目な想像すらしてしまうほどです。

 ここまで書いてきて、つくづく燃油サーチャージは消費者目線で分かりにくい制度だと改めて思います。これだけIT技術が進み、空席などに応じて運賃を変えられるのに、2ヶ月に1回でも燃油の価格に応じて運賃を変動できない理由はどこにあるのか、教えてほしいものです。

 そして今後、仮に円高にシフトしたとして、2社が「為替の変動の可能性」や「透明性のある対応」を考慮して米ドル建てに戻すことがないよう祈るしかありません。

 なお、7位にはチェジュ航空(7C)が関空/釜山線をダブルデイリーで開設する記事がランクインしています。近日中に韓国を訪問する予定ですが、便が非常に混んでおり、訪日需要の高まりを実感しているところです。7Cもいきなりの1日2便ですが、十分に勝算を見込めているのでしょう。

 韓国への日本人訪問者数は苦戦しているものの、昨年末のJATA訪問団に加えて、今週末には全国旅行業協会(ANTA)でも二階俊博会長が大勢の関係者を伴ってソウルを訪れ、相互交流の促進に向けた話し合いをする予定です。

 あれこれ書いた燃油サーチャージも、韓国線ならば4月以降は往復1000円となります。双方向の人流が大きく増加し、さらに7Cのような路線網の拡充に繋がってほしいと願っています。(松本)

▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2015年2月第2週:12月30日0時~12月30日22時)
第1位
日本航空、燃油サーチャージ条件変更、円建てで実質値上げ(15/02/07)
全日空も燃油条件変更、実質値上げ-日本航空と同水準(15/02/10)

第2位
カンタス、成田線はすべてブリスベンに、8月以降の計画決定(15/02/11)

第3位
激動の時代を乗り切る経営者とは-トラベル懇話会新春講演会(15/02/10)

第4位
東急電鉄、全販売店をJTBの「総合提携店」に-沿線シニアに照準(15/02/10)

第5位
日本旅行、15年上期に「値ごろ感」重視の新商品(15/02/09)

第6位
JTBGMT、訪日向けマンガアプリ「Ms.Green」、新コンテンツ開始(15/02/07)

第7位
チェジュ航空、関空/釜山線就航、4月3日から週14便で(15/02/07)

第8位
観光立国実現に資する「おもてなし」とは-京都市主催シンポから(15/02/12)

第9位
楽天トラベル、14年は営利16.4%増-15年も訪日推進(15/02/12)

第10位
通訳案内士、14年度は4割増の1658人合格、五輪などで注目(15/02/07)