着地型観光、テーマで「編集」を-地域全体での連携重視

  • 2014年11月11日

地域資源をテーマで活性化、地域全体の連携ポイント
地方創生で観光庁が積極支援、人材確保が課題に

長期的な自主財源の確保が必要
観光庁、積極的な支援も

北海道ニセコ町長の片山氏

 シンポジウムでは北海道ニセコ町長の片山健也氏が登壇し、長期的な視野での自主財源確保の必要性を説いた。片山氏は「行政は結果的には情報を全て平等に出すが、観光は本来差別するべきもの」と話し、訪問者には平等に情報を提供するのではなく、例えば良い施設を薦めるなど差別化していくべきと語った。

 こうした考えのもと、同町では日本で初めて株式会社として「ニセコリゾート観光協会」を設立。最初は苦戦したが、現在年間約1億5000万円を売り上げ、10名雇用する規模まで成長した。外国人スタッフを積極的に雇用して訪日客の取り込みをはかるとともに、長期的に景観環境を守る努力をしているという。

 同氏は今までの取り組みを振り返り「小さな街なので、観光、環境を守っていくのは大変」としながらも「外にお願いしても仕方ない」とし、引き続き観光と環境保全に投資をおこなう仕組みづくりに取り組む姿勢を表明。スキーヤーのリフト利用が多いことから財源として「リフト税」の整備を検討するほか、宿泊についても「富裕層向けの宿泊税のようなものを作り、自分たちの地域の金を自分たちで回していく仕組みづくりをしたい」と語った。

 一方、観光庁の長崎敏志氏は行政側からの支援について説明。今までは広域観光に関する支援として「観光圏」を支援してきたが「大組の支援だけでは今後地域の底上げは難しいという問題意識」から、予算要求で地域への取り組みを強化していく方針だ。2015年度予算の「優先課題推進枠」として、新規事業「広域観光周遊ルート形成促進事業」に14億円を要求。要求が通れば「ドイツのロマンティック街道など、観光圏ではないが線で地域が取り組むものについて、踏み込んで(支援して)いける」とした。

 また、新規事業として5億円を要求した「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」に触れ、「組織内ではつぶつぶ補助と呼んでいるが、ひとつひとつの観光の粒を大切に」していくことで、粒から線、面へと広げていきたい考えを示した。さらに、一歩踏み込んだ支援として二次交通の実証実験や規制緩和などの支援にも挑戦できるよう、予算要求をしていると話し「地域の方々と綿密な連携でおこなっていきたい」と意欲を示した。

 このほか、長崎氏は補正予算についても言及。地方創生が叫ばれる中大きなチャンスが来ているとし、「予算についてもチャレンジし、取るものは取って行きたい」と意欲を示した。ただし、補正予算は継続的に確保できるとは限らないため「中期的な予算確保には反する動きで、額として取れるが安定性にかける」と指摘。安定的な年度予算とのバランスを取りつつ、何ができるかを検討していきたいとした。

「観光まちづくり」の人材育成が課題
地域内での自立的育成システムの構築を

観光庁観光地域振興部観光資源課長の長崎氏  シンポジウムでは、着地型観光における人材育成を課題とする声があがった。長崎氏は、大学の観光関連学科が増える中、人材育成は航空会社や旅行会社などへの就職に絡んだ場合が多く「観光まちづくり的な人材はどこまで取り組めているのかというと心もとない」と現状を語った。ただし、人材育成は「大学教育でおこなうべきか」との問題を提起。行政としては「支援の取り組みはまだ方向性が見えない。今はネットワークを築く程度」と述べ、今後の課題として取り組んでいく姿勢を示した。

 丁野氏は「観光にかぎらず付加価値は人が作る」とし、人材育成の必要性を強調。「単発的な人材育成は限界がある。地域の中でその地域の人材を育てる循環をどう作るか」が重要だとした。例えばアカデミーのような形で3年間実施し、1回生が2回生を指導できるような循環ができて初めて「地域の中で自立的な人材の育成が可能になってくる」という。

 これをうけ、川崎氏は「私達の好きなもの、好きな街という意識を持ってないと地域内循環は生まれてこない」とした上で、「産業間連携の中で新しい場、ビジネスモデルができる可能性がある」と指摘。そうした新しい魅力を積極的にピーアールして人に伝えていくことが人材確保に繋がり、良い循環が生まれてくると話した。江崎氏も「観光業につく人材がなかなか無く、解決方法は見つかっていない」としながらも「(観光業を)職業として魅力的なものにしていくということは大切」と語った。