外国人の地方誘客、ウェブの最大限活用を-安心・安全確保も課題
FIT層ターゲットにSNSやウェブサイトを活用
ICTで受入環境整備も
ツーリズムEXPOジャパンで開かれた業界向けセミナー「地方都市へ、外国人観光客を呼び込む」では、ウェブやアプリを活用した地域の魅力発信と、自然災害などに対する安心・安全確保のあり方を取り上げた。セミナーは自治体の観光担当者などをターゲットに実施。今後増加が見込まれる外国人観光客をどう地方へ誘客するか、地震などの自然災害が多い日本で外国人が安心して滞在できる体制・整備のあり方などを示した。
「ミクロインバウンド」で安く効率的に
ターゲットは増加する外国人FIT層
セミナーの前半で登壇した立教大学経済学部講師兼TOKYO STAY代表取締役の鈴木庸介氏は、まず外国人観光客の地方誘致における考え方を「ミクロインバウンド」と表現。国として取り組む全体的な「マクロインバウンド」に対し、「自治体や事業者が単独で、かつ低予算で外国人誘致をめざすこと」をミクロインバウンドの定義とし、「ターゲットを絞り込み、費用対効果の高いマーケティングを考えることが、とりわけ地方自治体に求められる」と話した。
具体的なターゲットとして「欧米などの市場で割合の多い個人旅行者(FIT)」を挙げ、もともとFITの多い欧米豪市場に加え、ビザ緩和により中国や東南アジアからの訪日客も多くがFIT層になることを予想。「各国の旅行代理店への売り込みも大切だが、個人旅行者へ直接訴える努力が必要」であることを強調した。
鈴木氏は、特にFIT層は日本のゴールデンルート以外にも足を伸ばす傾向が強いと指摘。なかでもフランス人など長期滞在者が多いマーケットはその傾向が顕著であるとし、「地方の魅力の積極的な発信こそ外国人が求めている情報」と現状を訴えた。
増加が見込まれる外国人FIT層だが、旅行を計画する際の情報源は「ネットへのシフトが明確化」しているという。このため、鈴木氏は地域の魅力を発信する手法についても、従来主流だったメディアの招聘による紙媒体での発信は「きわめて費用対効果の低いメディア戦略」と断言。インターネット上の旅行クチコミサイトや個人ブログ、日本在住の外国人ブログをメディア戦略の中心に据えるべきとの考えを示した。
ただし、ウェブ展開を中心にする際には「売り込みたいウェブサイトなどに対してSEO対策や、アクセスがどのくらいあるのかを正確に把握する必要がある」ことにも言及。また、最近多く見られるFacebookを使った露出については、「広告は一定の効果があるが、『いいね!』を集めるだけでは意味がない」とし、Facebookから直接自治体または自社ウェブサイトに呼び込む広告展開に重点を置くべきとの見解を示した。