JATA、モンゴル委員会を初開催、客層拡大や素材開発へ協働

  • 2014年10月8日

 日本旅行業協会(JATA)は先ごろのツーリズムEXPOジャパンの会場で、JATAモンゴル委員会の第1回会合を開催した。同委員会の設立は、9月12日から15日にかけて阪急阪神ビジネストラベル代表取締役社長の難波江隆一氏を団長として実施された視察旅行がきっかけ。現地での歓迎会席でJATA副会長の菊間潤吾氏が、「日本からモンゴルへの渡航者が1万8000人で伸び悩む現状を打破するために、視察団参加の旅行会社を中心にJATAの中にモンゴル委員会を設立」することを約束していた。

 モンゴル側は、モンゴル旅行業協会副会長のエルデネパト氏をはじめ来日した旅行関係者9人のほか、MIATモンゴル航空(OM)日本支社長のソドノムドルジ氏が参加。日本側は旅行会社8人とJATAスタッフ2名が加わり、約1時間にわたって意見交換をおこなった。


▽新たな層を掘り起こし、市場のパイを拡大する

 JATA副会長の菊間氏は、「今までもモンゴルに強い旅行会社がモンゴルの旅に取り組んできたが、若年層の市場が中心に思える。2万人の壁を突破して、3万人、さらに5万人市場へ成長させる手立てとして、もっと多くの層や市場を視野に入れて商品の企画開発をするべきではないか」と問題提起。例として、パッケージツアーの主力市場であるシニア層が参加しやすいモンゴル旅行を研究する余地を指摘した。

 また、「日本の旅行会社と現地のランドオペレーターがもっと商品造成の段階から関わるパートナーシップを確立すべき」との持論を語った。さらに「JATAの海外旅行委員会としてモンゴル旅行の新しい可能性を追求して、パイを大きくしていくことに力を合わせていきたい」と述べた。

 一方、教育旅行を事業の柱とするアサヒトラベル・インターナショナル代表取締役社長の福田叙久氏は、「モンゴルの国立中等高等学校から、交流できる日本の学校を紹介して欲しいとの依頼があった。モンゴルの学生の日本での学校交流やホームステイが成功すれば、次は日本からモンゴルへ訪問することになる。双方向で交流機会ができれば、新しい旅の形も見えてくる」と、レジャー以外の可能性も紹介した。

 このほか、「過去の日食ツアーの経験で、ゲルはどこにでも建てられるものであることを知った。ゲル・キャンプにこだわらない、僻地でも遊牧民のようにゲルを立てて旅をするような自由な発想の企画もあると思う。ゲルは、2人より3人、4人などで使用することが普通なので、富裕層のシングル希望者には使い難い」(JTB首都圏ロイヤルロード銀座事業部マネージャーの横山健氏)といった声も聞かれた。

 そして菊間氏は、モンゴルの観光資源を開発する方向性について(1)新デスティネーションの紹介、(2)すでに知られているが深堀りできる観光地の再評価、(3)大都市ウランバートルの再発見の3通りに整理。このうちウランバートルについては、視察旅行でザナザバル美術館や寺院博物館などモンゴルの仏教美術のレベルが高かったといい、「見せ方や深い説明などを工夫すれば、都会の観光資源として魅力的なものになり得る」と語った。


▽情報不足が課題、次回会議は11月中旬に開催予定

 モンゴル側からは、エルデネパト氏が「これほど早くモンゴルについて、再び話し合う機会をもててうれしく思う」と謝意を延べ、「モンゴル旅行業協会の中に、日本市場を拡大するための日本委員会を設置しているが、日本側と折り合いがつかないまま、いくつかのパッケージが完成できずにいるものもある」と課題を指摘。委員会などの場で率直な情報交換が必要との考えを示した。

 また、日本側の参加者から出た意見に対しても、「富裕層や教育旅行、SITなど市場に合わせた企画開発の必要性もご指摘の通りだと思う」とコメント。「新空港建設の進捗情報の観光における重要性も再認識した」といい、逐次情報を発信していくと語った。

 このほか、ジグ-ルLLC社社長のドルジハンド氏は「今までも日本市場に向けて東京、大阪でセミナーをおこなったり、いくつか仕掛けをしたりしてきたが効果が出ていない」と言及。原因として、日本市場でモンゴル全体の情報が不足している可能性を指摘し、「双方で協力して情報発信をしていく方法を考えたい」と意欲を語った。

 なお、次回会合は11月中旬にモンゴル旅行業協会会長を団長とするグループが訪日予定であることから、それに合わせて開催することが合意されている。

レポート:西川敏晴(トラベルジャーナリスト 前地球の歩き方代表)