航空戦略課長、仁川とのハブ競争「乗継需要の取込みがカギ」
国土交通省航空局航空戦略課長の海谷厚志氏は5月22日、海外ホテル協会(OHEA)の定例会でおこなった講演で、日本の首都圏と韓国・仁川のハブ空港競争について言及。仁川は過去10年間で総旅客数が約2倍、乗継旅客数は約3倍に増加している一方、成田はともに減少傾向にあることを説明した上で、「絶対数としては少ないが、乗継旅客数が(2010年に)逆転されたことが大きい」と指摘し、今後は成田でも乗継需要の取り込みがネットワーク拡大のカギになるとした。
「航空行政の現状と展望について」と題した講演において海谷氏は、仁川では近年、アジアを中心に就航都市数が増加しており、成田から未就航の都市で仁川からは就航している都市が、日本を含むアジア圏に約40都市あると説明。また、成田と羽田は、仁川と金浦と比較して国際線就航都市の総数が85対138と少ないこと、戦後の日米航空協定などが影響してはいるものの、自国の航空会社の就航都市数も42対127と開きがあることにも触れた。
両者における航空会社の路線開設状況の比較では、日本の首都圏空港については自国の航空会社のみが運航している路線が非常に少なく、かつ大半の路線で自国の航空会社が就航していない状況を問題視。「日本の航空会社にはもう少し国際競争力をつけてもらうことも、今後の政策の方向性として必要では」との考えを示した。一方で仁川については、自国の航空会社のみが就航している路線の割合が高く、他国の航空会社のみが就航している路線が少ない点を評価。大韓航空(KE)とアシアナ航空(OZ)の2社とも運航する路線が少ない点についても、「うまく路線を散らして運航している。日本の航空会社に対しても、いろんな戦略を持っていただく方向で後押しが必要では」と述べた。
海谷氏は仁川の躍進の要因として、際際乗継旅客が大きく伸びている点に着目。2004年の乗継客数は445万人で、2012年には721万人にまで伸びているが、乗継の約4分の3が自国の航空会社の間でおこなわれている点を評価し、「そのことが自国のエアラインの強みになる。乗継需要をうまく取り込めば、直行便だけでは採算が合わず、就航できなかった路線にも就航できるようになる」と語った。一方、成田と羽田経由の乗継客数は、2004年の874万人から2012年には559万人にまで落ち込んでおり、特に成田での乗継は約6割が自国の航空会社と米国の航空会社の間である点を問題視した。
今後の乗継需要取り込みについては「空港の容量をどうするかが課題」と指摘。成田についてはLCCターミナルの整備や、駐機場やターミナルビルの増設などが課題となっている旨を説明するとともに、首都圏空港の機能強化については昨年の11月以降、同省の「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」で検討を進めているとした。発着枠増加などの検討項目については、「いろんな選択肢が出ると思う。そう遠くないうちに結論が出るのでは」と話した。
そのほか、海谷氏は空港利用料金の見直しについても言及。成田と羽田の空港利用料金は、ニューヨークやパリなど海外の主要空港に比べて低い水準にあるものの、航空会社が支払う着陸料金の割合が大きい点を指摘し、検討の余地があるとの見方を示した。