価値創造、困った時こそ好機-JATA経営フォーラム基調講演
企業価値とは顧客信頼度の最大化
「なくてはならない」存在に
2月26日に開催された「JATA経営フォーラム2014」で、世界有数の建設機械メーカー「コマツ」の相談役である坂根正弘氏が「世界の基本的変化と日本の構造改革」と題して基調講演をおこなった。今回の経営フォーラムのテーマは「新しい価値創造への挑戦」。2001年の社長就任時に、800億円の赤字を抱えていた同社を立て直したことで知られる坂根氏は「企業価値」をどのように捉え、どのような工夫を凝らしたのか。講演の中から紹介する。
▽顧客は企業価値を「作り」「評価する」
中根氏は、「代を重ねるごとに強くなる会社」であることが重要であり、そのためには企業価値についての考え方を明確に持ち、社員が価値観を共有しなければならないと説く。
企業価値の定義は「教科書のどこにも出ていない。世界のどこにも答えはない」が、「社会、株主、メディア、金融機関、お客様、協力企業、販売店、社員、これらの人々からどれだけ信頼を得ているかを計測できれば、それが企業価値」であることはまず間違いないとの考えだ。
とはいえ、ステークホルダーはそれぞれ立場も利害も異なる。例えば、社会全体からすればコマツの業績の良し悪しよりもコンプライアンスや雇用の増加が求められる。
一方、株主は圧倒的に業績、株価、配当への要望が強い。また、社員や協力企業は収入の増加も望ましいが、「それよりも近所の人からコマツはいい会社になった、といってもらえる方が嬉しいかもしれない」。
こうした中で、大きく選り分けると、社会、メディア、株主、顧客は「企業価値を評価する」立場で、また顧客、協力企業や販売・サービス代理店、社員は「企業価値を作る」人々となる。顧客は企業価値を作りながら評価もする最重要ステークホルダーだ。
これらを考慮すれば、「顧客にとってコマツから得られる信頼度が最大化すればいい」と坂根氏。「信頼度というのは分かりにくい」ものの、「顧客にとって、コマツでなければ困るという度合いがどれだけ高いか」が重要であり、コマツではこれを「ブランド・マネジメント」として実施しているという。