価値創造、困った時こそ好機-JATA経営フォーラム基調講演
企業価値とは顧客信頼度の最大化
「なくてはならない」存在に
▽「売れ続ける」ためにすべきこと
坂根氏は、「セールス」、「マーケティング」をそれぞれ「できたものを売る戦略」、「ニーズに合ったものを売る戦略」と位置付け、これに対して「ブランド・マネジメント」は「売れ続けるための戦略」であるとする。
ある会社の商品やサービス、あるいはその会社でなければ困るという顧客を出来る限り多く作ることで、「パートナーとして選ばれ続ける存在」になる。旅行業界でも、「どこどこの旅行会社でないと本当に困る、どのようにそう思ってもらえるか。それしか答えがない」との考えだ。
コマツの場合は「ダントツ商品」、コマツのウェブサイトによると「他社が3年から5年は追いつけない断然トップの先進性を持つ商品」が一つの手段。しかし、逆にいえばダントツ商品も必ず他社が追い付いてくることになる。そこでコマツでは「ダントツサービス」、「ダントツソリューション」も推し進めているという。
坂根氏によると、ダントツソリューションの例として、チリとオーストラリアの鉱山で完全無人のダンプトラックが稼働しているが、「このお客様は絶対にコマツから離れられない」。なぜかというとダンプトラックだけでなく、運営に関わる部分や、鉱山に張り巡らせる情報通信のインフラをすべてコマツやコマツの子会社が納めているためだ。
日本では「今までビジネスモデルは後追いをして、ものづくりの現場力だけで勝負してきた」が、ダントツソリューションのように「ビジネスモデルづくりで先行して現場力を武器にする」ことで企業価値が高まっていく。
また、顧客との関係を見直すこともブランド・マネジメントであり、コマツでは出入り禁止レベルの関係の営業先をいかに「離れられない」顧客に引き上げるか、という活動を展開している。
営業禁止レベルの営業先には共通の特徴があるといい、それは例えば「昭和40年不況の時に、支払いにちょっと困って待ってくれといったのに機械を引き上げていった、もう二度とコマツは買わない」といった顧客で、「困った時に助け合わなかった関係が最悪」。
坂根氏は旅行業界も同様とし、突発的な事件、事故発生時の対応など「困った時の印象というのは強く残る」もので、「困った時の“ああ助かったな”と思う気持ちが一番の差別化要因」と指摘。「計画変更になった時の手際良さ、日本の旅行業の最大の特色はそこにある」との考えを示した。