パレスチナ、危険なイメージ払拭へ-旅慣れたシニア、独身女性向け商品を
国際協力機構(JICA)は2月6日、JTBコーポレートセールスの協力のもと、都内でパレスチナ観光セミナーを開催した。JICAは日本政府によるパレスチナの持続的な社会経済に向けた支援策の一環として地元が利益を享受できるような観光の促進のため活動をしており、2013年からジェイティービー(JTB)への業務委託を開始し、官民連携による持続可能な観光振興プロジェクトを展開中だ。
セミナーでは冒頭、JICA産業開発・公共政策部民間セクターグループ次長の村上弘道氏が登壇し、「パレスチナは世界史の教科書にある歴史の舞台。旅行者数は年間230万とも350万人ともいわれ、観光素材の数も十分」と説明。「自分自身も渡航前には怖いというイメージを持っていたが、実際に行くと都市によっては非常に平和な雰囲気」とし、解決すべき課題があることは認めつつも、日本人が積極的にパレスチナに旅行することで地域の平和につながる意義がある考えを示した。
また、JTBコーポレートセールスで「パレスチナ官民連携による持続可能な観光振興プロジェクト」を総括する杉野正弘氏も、セミナーや雑誌などでパレスチナの平和な様子を紹介するなどの取り組みを通し、危険なイメージの払しょくをはかりたいとした。
パレスチナは外務省の渡航情報で、ガザ地区と同地区との境界付近は「渡航の延期をお勧めします」(所属企業や団体等を通じて組織としての必要かつ十分な安全対策をとることのできない場合、渡航の取りやめ及び国外への退避をお勧めします)となっており、一部を除く西岸とその境界周辺、レバノン国境地帯についても「渡航の延期をお勧めします」が発出されている。しかし、上記以外のジェリコ、ベツレヘム、ラマッラなどを含む地域は「十分注意してください」となっている。
こうした状況から、杉野氏は「日本人にとっては戦争報道の多さからネガティブな印象を持っている人が多いかと思う」とコメント。しかし、「現地は軽犯罪などが少なく安全面は確保されていると思う」とし、全土についてツアーを組むことができるわけではないが「ベツレヘム、ヘブロン、ジェリコへは今も実際にツアーがあり、デモなどに近づいたりしなければ問題ない」とした。
同氏によると、パレスチナは巡礼に訪れる欧米人にはすでに身近でなじみのある旅先。日本人には文化や歴史などのアプローチが有効との見方を示し、シニア層や独身女性をターゲットに据えていきたいという。また、初めて海外に行く旅行者よりは旅慣れている層向けの商品造成がよいとの考えだ。
さらに、現在の旅行商品は周遊型のものが多く、パレスチナへの滞在期間が非常に短いため、滞在期間を延ばせるようアクティビティなどを積極的に紹介していきたいとした。
このほか、セミナーではパレスチナ体験型ツアー団体ネットワーク事務局長のシモン・アワド氏が登壇。キリスト生誕の地に代表される宗教の聖地、世界遺産、自然、食文化や祭りなどパレスチナの観光素材をアピールした。