ANAグの次期経営戦略、羽田は「起爆剤」、地方需要獲得めざす
ANAグループは10月30日、2014年1月末をめどに発表する次期経営戦略について、方向性を取りまとめた。同社上席執行役員グループ経営戦略部長の清水信三氏は、羽田空港の国際線発着枠拡大や、訪日外客数の増加、2020年の東京オリンピック開催などをあげ、「大きな好機を逃さず、世界のリーディングエアライングループになっていきたい」と意気込みを語った。
中期経営戦略は、フルサービスキャリア事業、LCC事業、航空関連事業、多角化事業、貨物事業の5項目で設定。フルサービスキャリア事業では、国際線で羽田発着枠拡大を「起爆剤」と捉え、首都圏発のビジネス需要や、羽田経由地方発着需要の獲得をめざすとした。清水氏は「我々が最大の枠を持って国際線をやるのは初めての経験。羽田最大の国際線ネットワークキャリアの優位性をしっかりと活かしたビジネスを構築していきたい」と意欲を示した。
また、スターアライアンスやジョイントベンチャー(JV)事業を活用し、アジア/北米間を中心とした成田の接続ネットワークの強化をはかる。日本人以外の旅客についてもJVを活用し、増やしていく考え。フルサービスキャリアならではのプロダクトの設定やサービス拡充による他社との差別化も進めていく。
一方、国内線では柔軟な機材配置による需給適合により、運航コストの抑制をめざす。運賃については自社努力によるコスト削減に加え、構造的な仕組みの見直しをおこないながら、戦略的に設定していくとした。
LCC事業では、日本を含む東アジアでのLCCマーケットの創出をはかるとともに早期に収益事業としての基盤を確立させたい考え。バニラ・エアでリゾート地を中心とした国際線を展開し、早期黒字化をめざす。また、ピーチ・アビエーション(MM)は、「非常にうまい政策をとっている。今後は事業基盤の強化をしていきたい」(清水氏)という。
航空関連事業では、アジアでの航空会社数や航空機数の増加を見込み、戦略的に投資していく。東南アジアのパイロット養成需要を見込み、パンナム・ホールディングスなどの株式を取得し、訓練拠点を設置。また、ミャンマーの民間航空会社、アジアン・ウィングス・エアウェイズ(YJ)と資本提携をおこない、ミャンマーや東南アジア地域の顧客取り込みと、ヤンゴンでの内際乗り継ぎなどによる、全日空(NH)ネットワークとのシナジー効果をはかる。
このほか、多角化事業では、グループ各社で外部収入の拡大やコスト競争力の強化に取り組むことで、イベントリスクによる影響の緩和をはかるとしている。
また、次期経営戦略の方針では、現在の中期経営計画で掲げている「1000億円のコスト構造改革」についても言及。当初計画どおり14年度中の完遂をめざすとした。ホールディングスとして各事業会社に対するガバナンスを強化することで、改革を推し進めていく考えだ。
具体的には、コスト競争力に優れた同業他社のビジネスモデルの研究を実施し、グループ各社が市場競争力のあるコストターゲットの追求をめざす。また、間接人員削減目標の完遂や、ブランド価値向上に資するサービスに対し、集中的に資源を投下。全体のコストの最適化をしていきたいとした。