訪日増めざし品質認証制度を活用、ブランド力強化も
今年3月に日本旅行業協会(JATA)が創設した、インバウンドを取り扱うツアーオペレーターを認証する「ツアーオペレーター品質認証制度」。2020年の東京オリンピックも決定し、さらに世界に向けて日本のブランド力をアピールしていく必要性が高まる中、JATAでは同制度の普及により、インバウンド拡大に弾みをつけたい考えだ。JATA国際観光フォーラム2013では「日本のブランド力を強化して観光立国を実現する~ツアーオペレーター品質認証制度の挑戦」と題してシンポジウムを実施。品質認証制度について振り返ると共に、先行事例として観光品質基準「SAKURA QUALITY」を取り上げ、制度の活用による日本のブランド力強化について議論した。
モデレーター
佐藤博康氏 松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科教授
パネリスト
小林宏之氏 中部圏社会経済研究所 代表理事
井口智裕氏 雪国観光圏 代表理事
篠原康弘氏 国土交通省観光庁 審議官
丸尾和明氏 JATA理事、同訪日旅行推進委員会 委員長、日本旅行 代表取締役社長
認証制度を活用、訪日2000万人への起爆剤に
シンポジウムでは、まずJATA訪日旅行推進委員会の委員長を務める日本旅行の丸尾和明氏がツアーオペレーター品質認証制度について、改めて発足の背景を説明した。2012年の訪日外客数は前年比34.6%増の836万8100人。観光庁では訪日外客数を2016年までに1800万人、2030年までには3000万人に増やす目標だが、JATA会員会社60社をベースに見ても、インバウンドによる売り上げは全体の1%に過ぎないという。
丸尾氏は、旅行会社の取扱増が最大の課題であるとした上で、インバウンド拡大と旅行会社による良質な商品の提供は密接に関わると強調。質の高い商品はリピーターの造成にもつながると語った。同氏によると、インバウンドの多くはアジアからで、大半がツアーオペレーターを通じて手配をしている。現状では、ツアーオペレーターは品質重視型と価格重視型の2つにわけられる。前者は品質に応じた価格で商品を提供しており顧客満足度も高いが、近年激化する価格競争の中では競争力に欠けるという。
こうした中、JATAではツアーオペレーター品質認証制度を設立。「価格は高いがそれに納得して支払うのがブランドの力。日本を評価するブランドを確立し、リピーターの獲得、新顧客を生み出すことにつなげるにはこうした(品質重視型の)オペレーターの存在が重要」との考えで、丸尾氏は「品質の高さは日本の競争力の源泉。それを可視化することが品質認証制度」と説明した。認証には厳しいハードルを設け、認証後も質を下げないための措置を講じているという。
今後は制度自体の認知向上をさらに高めていきたい考えで、すでに観光庁や日本政府観光局(JNTO)と連携した取り組みを実施するとともに、旅行会社には参画を呼び掛けているという。第1期認証では23社(※取材時の9月14日時点。その後第2期として10社を認証)が認証を受けており、今後も年に2回の審査をし、認証会社を増やしていくとした。