香港、元TAの堀和典氏が日本局長に、顧客層拡大に意欲
香港政府観光局(HKTB)は10月1日付で、日本局長に堀和典氏を任命した。堀氏は今年3月までオーストラリア政府観光局(TA)日本局長を務めていた。10月4日に開催した業界紙向けの就任会見でHKTB理事長のアンソニー・ラウ氏は、「経験豊富な堀氏を迎えることができ、大変興奮している」と歓迎。その上で、「新しいアイディア、知識により、香港に新しい旅行者をもたらしてほしい」と期待を示した。
堀氏は冒頭、香港のプロダクトなどについては「これから勉強しなくては」とした上で、旅行業界全体の話として「出国者数全体が大きく伸びることはない」との予測のもと、「シェアを確実に確保すること」が重要となると挨拶。そのためにはリピーターに加えて、新しいセグメントの誘客を進めてファーストタイマーを獲得していきたいと意欲を語った。
香港では現在、尖閣問題や円安などの影響を受けて需要が減少傾向にあり、2013年の日本人訪問者数は1月から8月までで前年比23.2%減と苦戦しているところ。しかし堀氏はこうした現状について、「尖閣問題だけではない」と語り、円安も他デスティネーションで日本人訪問者数が伸びているところもあることから、「理由にはしたくない」と言及。
回復に向けては、まずは「安全であること、香港の人々が非常に親日的であることをアピールしていきたい」考え。ラウ氏も、日本市場が中国、台湾に次ぐ市場であると重要性を指摘した上で、「今後も投資を継続、追加していく」と強調した。
今後取り組む新セグメントについてラウ氏は、これまでHKTBがOLなど若い世代の取り込みに注力していたのに対し、家族客や団塊世代への取り込みを期待。また、OL層でも、漢方やウェルネスをテーマとするなど、新しい旅行目的を提案していきたいという。堀氏も、訪問者数の大幅な増加が望めない中で、滞在日数や消費額の引き上げをめざしたいとし、「プレミアムな体験」も打ち出していく考えを示した。
また、堀氏はマーケティングの進め方として、年齢や性別などでターゲットを決める手法が主流となっているが、既婚と未婚、子どもの有無などによって振る舞いや考え方、可処分所得が全く違うため、そうした「ライフステージ」によってセグメントを特定する方針。さらに、「消費者は消費者を信じる」との考えから、TA在籍時と同様、「共感」によって購買意欲を刺激する手法を採る。そのためにもオンラインやソーシャルメディアでの展開を強化していく方針だ。
さらに、その過程で旅行会社とも積極的な協業をはかるが、すべての分野ですべての会社と幅広く連携するのではなく、旅行会社の強みに合わせて戦略を分けていきたいとした。
このほか、HKTBとしてマカオ、広州と協力し「珠江デルタ」の周遊も強化。今後、橋などのインフラ整備が進むことから、例えば香港の街、マカオのエンターテイメント、広州の歴史といった特性を組み合わせてアピールしていきたい考えだ。