トップインタビュー:ピーチ・アビエーション代表取締役CEO 井上慎一氏
就航1周年で更なる品質向上、他社との差別化はかる
地域密着の事業展開、那覇の小拠点化も検討
2013年3月1日に就航1周年を迎えたピーチ・アビエーション(MM)。当初計画よりも1ヶ月半早く輸送旅客数150万人に達するなど、関空を拠点とした日本初のLCCとして国内外で認知度を高めている。今年はさらに新規就航と既存路線の増便を予定。運航の質を高めながら、他社との差別化をはかり「日本ブランドLCC」としての存在感を強めていきたい考えだ。就航1年目の実績と今後の取り組みについて、同社代表取締役CEO井上慎一氏に話を聞いた。
—3月1日に就航1周年を迎えられました。この1年の実績と所感をお聞かせください
井上慎一氏(以下敬称略) 我々は1年目の目標として2つのテーマを掲げた。1つ目は航空会社としてしっかりと安全に運航すること。就航から今年1月末日までの平均実績では、定時出発率が83%、就航率が99%、搭乗率が76%だった。この1年でとりあえずお客様に航空会社として認知されるレベルには達したのではないか。
2つ目は「空飛ぶ電車」という新しいサービスモデルの認知度向上だ。電車は券売機でチケットを買い、自分で電車に乗るが、MMではネットで航空券を買い、自分でバーコードをスキャンしてチェックインする。さらに、電車と同じように定刻に出発するため、チェックイン時間は厳しい。フルサービスではないが、お客様に対し「こういう取り組みをしているから航空券が安くなる」という理解は進んだと思う。
—貴社は関空を拠点にしていますが、関西の市場性についてお聞かせください
井上 就航当初は混乱もあったが、安い理屈が分かれば受け入れていただけた。関西の文化は懐が深く暖かい。また、年齢に関係なく、新しいものに非常に柔軟だ。たとえば、ネットとは遠い世界にいると思われていたシニアの方々にも乗っていただいており、リピーターにもなっている。
さらに、想定外の需要も出てきた。たとえば、「行き先はどこでもいい。とにかく孫と一緒に1万円以内でどこかに行くことが楽しい」というような需要がある。また、ソウルを日帰り旅行する主婦層がいるのを知り、日帰り運賃を設定したところ、大きな反応があった。新しい需要を開拓しているというよりも、市場と一緒に需要を創造しているという感覚の方が強い。
顧客層は男女比が半々で、国際線の場合インバウンドは香港線で6割、台北線で5割だ。仁川線はアウトバウンドが多い。海外ではブランディングをしっかりと実施してきたが、プロモーションなどは一切していない。しかし、MMで日本に行きたいという旅行者も多いと聞く。口コミでMMの話が広がっている印象だ。機体カラーが好評で、中国名の「楽桃航空(Happy Peach)」も、従来の中国系航空会社とは違う明るい雰囲気で気に入ってもらえているようだ。