トップインタビュー:ピーチ・アビエーション代表取締役CEO 井上慎一氏
就航1周年で更なる品質向上、他社との差別化はかる
地域密着の事業展開、那覇の小拠点化も検討
—LCCにとって最大の課題であるコスト削減の取り組みについてお聞かせください
井上 まだ7機しか機材がないMMが、ユニットコストを語るのは意味がないことだと思う。しかし、ビジネスプラン通りにユニットコストも改善しているのは事実だ。そのために、さまざまなコスト削減を実施してきた。LCCターミナルがオープンする前は、デパートの跡地を利用した暫定ターミナルを利用。節電を進め、ペーパーレスも徹底している。
コストカットは暗くて辛いイメージがあるが、MMとしては楽しみながらコストを削減しようと取り組んでいる。初便就航行事では、従来型のテープカットセレモニーなどはやめて、従業員によるハイタッチでお客様をお送りした。これにはコストがかからないうえに、お客様にも喜んで頂けた。また、沖縄就航のときは、道頓堀川に船を浮かべて従業員が就航をアピールするなど工夫して告知活動を展開している。安全とお客様に接する部分以外のところは、あらゆることを実施しコストを下げていく。
—航空会社間の競争が激化するなか、今後環境の変化にどう取り組んでいくお考えですか
井上 MMには、学生、若い女性、主婦、シニアなど新しいお客様に乗っていただいている。たとえば、東京から深夜バスで大阪に来て、MMで沖縄に飛ぶという学生需要もある。我々としては、限られたパイを奪い合うというよりも、新しい需要を取り込んでいるという感覚だ。他社LCCとの競争については、MMは純粋な日本ブランドのLCCという点をアピールしていきたい。そうすれば自然と差別化されていくと考えている。
また、短期間にリピートしていただけるお客様を増やすためにも、地域密着という視点が大切だ。たとえば、空港アクセスの改善、メディカルツーリズムなど新しい観光の仕掛け、文化交流機会の創出など新しい仕組みを地域と一体となって造っていきたい。海外のみならず、日本国内でも関西の魅力はまだまだ伝わっていないと思う。さらに、他の就航地でも同じような取り組みを考えていきたい。
—今後の路線展開についてお聞かせください
井上 まず3月に鹿児島線を1日6便から8便に、福岡線を1日8便から10便に増便。新規路線では、4月12日に仙台線、6月14日に新石垣線、9月13日に那覇/新石垣線、国際線では9月13日に釜山線を開設する。MMとしては、新規就航よりも市場の反応がいい既存路線の増便を優先していく。機材を現在の7機から今年8月までに10機に、2015年12月までに17機に増やしていく予定だ。
関空以外では、那覇に小規模なベースをつくる計画だ。那覇/新石垣線もその一環。直行便よりも安いため、MMの国内線を乗り継いで札幌あるいは鹿児島へ飛ぶ需要も増えているが、沖縄にもそういった需要が創出されるかもしれない。将来的には那覇発の国際線も考えられるだろう。
那覇をベースとすれば、就航可能な範囲が東南アジアや中国南部などに広がることになる。あくまでも検討段階だが、沖縄の観光素材を考えるとインバウンド需要もあると思う。安い運賃で海外から観光客を呼び込むことは観光振興につながるだろう。那覇のLCCターミナルを活用して就航したいと考えている。
なお、現在羽田や成田に乗り入れる計画はない。基本的に混雑空港では一便遅れると玉突きでどんどん遅れていく。MMは7機でめいっぱい路線を張っているため、滑走路で離陸を持つのは好ましい状況ではない。