上期商品は旅行会社の力を前面に-店頭との連携重視、教育を強化
旅行会社力の発揮には販売店が重要
販売増加へ連携強化
販売施策では、店頭スタッフの教育・連携の強化が目立つ。旅行会社の企画力、提案力を打ち出す商品造成では、それを伝える販売店の役割がより重要になるとの認識だ。
日本旅行では方面別に加え、クラスター別にもセミナーを実施。販売店向けの資料には商品をすすめる客層について「マイペースに過ごしたい20代~50代の母娘」「ヨーロッパを行きつくした50歳~60歳代のご夫婦」など細かく想定ターゲット像を記載している。このほかJTBWVでは経験年別のセミナーも回数を増やしており、スタッフ教育は細分化して多頻度におこなわれるようだ。
また、ホリデイでは販売店との連携で今年のコンセプトである「ここち良さ・快適さの提案」の目玉施策「アレンジも承ります!」を始め、アレンジのリクエスト対応ができることをパンフレットに示した。販売店にとっては手間がかかるが、「アレンジをしたお客様はキャンセル率が低い」(田口氏)と説明。販売側からの提案で実現したもので、今後も製販一体の取り組みを推進していく。
一方、ジャルパックでは「商品になじんでもらうことが大切」(二宮氏)と、販売店向けの研修旅行を実施しつつ、営業担当と後方支援のスタッフの教育も力を入れる。自社スタッフの商品知識も深化させ、販売力とサポート力を高める方針だ。
このほか、販売施策では、ANAセールスが今年から全方面で早期割引を設定したほか、航空系ホールセラーの強みを生かし、対象方面へのツアーで国内線代金を0円で利用可能としている。
IT、ネットの活用で新施策
販売はリアルとネットで差別化進む
ITの活用では、KNT個人がスマートフォン向けアプリ「QUEMA」を使用した次世代パンフレットを開始。QRコードをかざして現地の様子を動画で確認できるようにしたもので、旅への意欲を掻き立てるとともに、旅行前の不安解消もはかる。例えばヨーロッパでは、観光地のみならず食事を含む全体的な内容確認ができるコースもある。
また、ウェブ展開では日本旅行が熟年・シニア向けの専用サイト「プレシャス・エイジ」を開設。既存の女性向けの「たびーら」とともに、重点客層の専用サイトを整えた。商品告知や対象客層とのコミュニケーションの場としても活用する考えで、「ウェブ販売ともリアルとも違う、新しいチャンネルの位置づけ」(阿部氏)と説明する。
ウェブ販売はJTBWVが前年比20%増を計画するなど拡大傾向にあるが、リアルは高付加価値商品、ウェブは間際商品や価格訴求型と区別されつつある。「ウェブの親和性の高いユーザのニーズ充足」(ジャルパック)、「パンフレットでは不可能な商品の設定」(日本旅行)、「トライアル企画や新規就航路線をいち早く販売」(ANAセールス)など、ウェブの特性を生かして、全体のパイ拡大をはかっている。
ただし、KNT個人では「インターネットはひとつの申し込み手段」とするものの、「リアル販売と同様に、高付加価値商品に軸足を移していく」(旅行事業本部部長(提携販売担当)池田康司氏)と、一線を画す考えだ。
なお、全体の販売単価だが、品揃えなどによって異なるものの、JTBWVで前年比2%減など値下げ傾向にある。期首商品の設定は昨年中に行なわれていることもあり、燃油の高騰など現在の市場環境から見れば、お買い得な金額設定になっているといえるだろう。