修学旅行の現状-長野県が近畿圏を調査
長野県が修学旅行の誘致に力を入れている。東京や大阪で毎年1-2回説明会を開き旅行会社を招いているほか、学校関係者にも修学旅行適地としての信州をアピールしている。その効果は数字となって表れている。
実施校は大阪が最多で98校
長野県学習旅行誘致推進協議会が、全国修学旅行研究協会と日本修学旅行のデータをまとめ、関西2府4県(大阪府、京都府、滋賀県、奈良県、兵庫県、和歌山県)と京都市、神戸市、大阪市の公立中学校の修学旅行実態調査を発表した。
2府4県と3政令指定都市から修学旅行を信州・信越方面で実施したのは2011年に224校あった。過去5年間の推移では07年が198校、08年が200校、09年が202校、10年が221校なので着実に増えている。
11年の実施校を府県市別でみると、大阪府がもっとも多く98校、次いで大阪市が58校で、京都府29校、兵庫県20校と続く。大阪府、市が突出している。ちなみに過去5年間を遡っても和歌山県は1校もない。長野県では「地理的に遠く、交通の便が影響しているのだろう」とみている。
長野県の関係者が信州の修学旅行の売りにしているのが、自然豊かな土地柄を生かした体験メニューの豊富さはもちろん、旅行費用が低くすむ点。近畿2府4県から信州方面への11年の平均費用は1人4万6749円。最高の滋賀県で5万1426円、最低の大阪府では4万2374円になっている。
2府4県平均の4万6749円は、他地域への修学旅行費と比べても安い。近畿から北海道は1人6万9962円、沖縄6万6070円、関東5万8596円、九州5万7964円、中・四国4万9702円なので、信州の低さが目立つ。近畿から信州へ行く修学旅行はバスが多く、航空機や新幹線を使うエリアに比べて交通費が低く抑えられているからだ。
修学旅行に締める交通費の割合でみると顕著。高い順に▽北海道60.7%▽沖縄58.7%▽九州49.0%▽関東40.9%▽中・四国29.6%に対して、信州は21.2%にとどまる。この結果、信州の修学旅行では他地域にはない特徴として体験学習にかける費用の高さが際立つ。他エリアが4千-8千円台なのに、信州では1万2千円以上になっている。
滞在型で体験学習重視
さらに連泊率も信州が高い。63.9%という高率だ。これは、周遊型の九州が14.2%なのは別格としても、信州を除きもっとも高い関東ですら47.5%だ。これらも「1カ所に滞在して体験学習を楽しむ」(長野県関係者)という信州の修学旅行のスタイルを示している。
一方、昨年は東日本大震災のため修学旅行も大きな影響を受けた。近畿2府4県の中学校でも3割が計画を変更した。方面別では、関東の変更数が多い。当初行き先を関東としていた335校のうち、88%に当たる296校が中止もしくは行く先を変えている。その影響は、近畿から見て原発に近づくことになる信州にも及び、計画総数の6%に当たる9校が信州から行き先を変更した。
長野県の担当者によると「旅行会社や先生は了解してくれても、生徒の親の反対が強かった。でも逆に関東からは西北に当たるので代替地として信州への修学旅行が増えた」という。
昨年の修学旅行は完全に"西高東低"だった。近畿2府4県986校の旅行実施方面は、九州が347校と前年から205校も増えた。九州新幹線全通の追い風もあったが、震災の影響だと考えられる。沖縄も51校増え337校だった。逆に関東は286校も減って61校だった。
長野県への修学旅行は今年も堅調で、特に訪日教育旅行は昨年の反動で大幅に伸びているという。長野県では「過去最高だった一昨年を確実に上回りそう」とみている。
情報提供:トラベルニュース社