JNTO、12年度は富裕層強化、観光の質の向上へ-韓国、欧州回復めざす
日本政府観光局(JNTO)は2012年度、観光の質の向上をめざす方針だ。4月26日の記者会見でJNTO理事長の松山良一氏は、観光立国推進基本計画が「観光の裾野の拡大と質の向上」を掲げていることに触れ、「ボリューム一辺倒からバリュー重視に方向性を切り替えてやっていく」方針を示した。質の向上で、インバウンド観光業の自立や、経済、雇用の活性化につなげたい考えだ。
JNTOでは12年度の運営方針として、「海外プロモーションの展開」「外客受入体制の整備」「国際会議の誘致促進」を設定。海外プロモーションの展開では、「縦割り行政への挑戦」を課題としてかかげ、オールジャパンでの日本ブランドの売り込みをはかる。
また、ターゲットをセグメント化し「選択と集中」を実施。観光の質の向上のため富裕層や中間層に対する取り組みを強めるほか、若者の教育旅行への取り組みやMICE誘致への取り組みも行なう。富裕層、中間層の主なターゲットは中国とし、訪日促進のためビザ取得条件の緩和などを働きかけていく。また、台湾、シンガポール、欧米も大きなターゲットとして位置づける。FITが多いため、富裕層専門の現地旅行会社への働きかけを強めていく考えだ。将来的には中東の富裕層の取り込みもめざす。
その一方で、FITやリピーターが多い台湾、香港、欧米市場を中心に、「日本への旅行は高い」というイメージの払拭もはかる。松山氏は「例えば1000円でおいしい昼食など日本にある。宿屋も7000円くらいで良い宿に泊まれる」とアピールし、手頃で値段で旅行ができる点を周知徹底させたい考えを示した。
さらに、震災の影響からの回復が鈍い韓国や英国、フランス、ドイツ3ヶ国の欧州市場に対しては集中的にプロモーションを展開する。たとえば韓国ではまずは九州への集中的な総客をはかっており、今後関西エリア、首都圏エリアと順を追ってプロモーションをしていく。
「外客受入体制の整備」では、東京・丸の内の外国人旅行者向けツーリスト・インフォメーション・センター(TIC)を全国の海外向け観光案内所のリード役と位置づけ、海外への積極的な広報活動を展開。全国の観光案内所の運営支援も行なう。また、ICT(情報通信技術)の強化やWi-FiとATMの設置促進も働きかけていく。「国際会議の誘致促進」では、セールス活動の強化をはかる。松山氏は実績として、10月に開催予定の国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会や、沖縄でのミス・インターナショナル世界大会を事例としてあげ、「12年はMICEの当たり年。しっかりこなすことでMICEの世界に日本はある、ということを訴えていきたい」と述べた。