クローズアップ:店頭販売に新しい活路、ネット時代にこそ原点回帰
インターネット興隆の時代においても、大手、中小に限らず店頭販売重視の姿勢を見せる旅行会社はある。インターネット販売から店頭販売に舵を切るのではなく、それぞれの親和性を考慮しながら販売を進めていくというアプローチだ。店頭販売重視は単に利益率の問題ではない。旅行は形のあるものではないため、より消費者に近い場所で販売しなければ、多様化するニーズは汲み取とれず、顧客満足度も高められないとの思いもあるようだ。インターネット時代における旅行会社の存在意義を考えるとき、店頭販売の再評価は必然と言えるかもしれない。自社で商品造成する中堅旅行会社2社の取り組みを探った。
店頭でコンサルティング、ニーズに合わせて旅を提案
旅行会社のインターネット経由の取扱高は年々増加しており、日本旅行業協会(JATA)によると、2010年に第1種旅行業者が消費者へ直接旅行商品を販売した取扱高でみると、インターネット販売比率は前年比3.53ポイント増の9.55%となった。こうしたなか、店頭販売の意義を改めて見直す動きが生まれている。
エス・ティー・ワールド(STW)最高経営責任者の鹿島義範氏は今年のJATA経営フォーラムで、インターネットでの販売をやめる訳ではないとしながらも、店頭でのコンサルティングを強化し、店頭受注の拡大をはかる「脱ウェブ化」を進めていると明らかにした。STWの場合は販売の85%をインターネットから受注しているが、ここ数年、接客比率が高まり、インターネット上で完結する取扱量が減少傾向にある。顔を合わせて予約をしたいという「信頼感」のニーズが高まっているという。
STW経営管理グループ経営管理・法務担当グループマネージャーの小圷孝幸氏は、ネットで予約を完了する割合はまだ多いとしながらも、「それだけでは成長はない。来店していただき、ニーズを引き出し、それに合う旅行を提案した方が、顧客満足度は高まる」と脱ウェブ化の意図を話す。また、販売推進グループ・グループマネージャーの武井良太氏も「STWの『旅に感動を与える』というテーマがウェブだけでは表現しきれない」と話し、顧客と一緒に旅行を造り上げていくことの意義を強調する。
そのSTWの方針が具現化されたのが、今年2月にオープンした渋谷駅前店。駅地下と直結し、1階に映画館があるビルに「消費者との接点を増やしたい」(武井氏)とオープンした。「例えば、『夏にヨーロッパに行きたいが、どこがいいのか』『ハワイに行くが、ホテルはどこがお勧めなのか』といった疑問を持つ消費者はネットで旅行は探せない。武井氏はお客様のニーズを聞き出したうえで、プランニングをする」ことがやるべきことだと語る。