海外渡航者10億人超時代に直面する諸問題-ITBベルリンより
今年はシルクロードのテーマ館設置
ITBベルリンは国連の世界観光機関(UNWTO)とパートナーシップを結び、運営やテーマの方針決定に深い関係を持っている。それを象徴していたのが、7号棟の2つのフロアにわたって展開したシルクロード関連のテーマ館だ。UNWTOは、2010年から「シルクロード・アクションプラン」を立ち上げ、観光開発の援助を進めてきた。
このプロジェクトは、今まで関連各国で細切れに行なわれていたプロモーションを「ルート」として開発しようとするもの。昨年に続き、30ヶ国近くの大臣級の要人が集まり、非公開で大臣会議を開いたのを始め、ツアーオペレーター向けのインフォメーションセッションにも70名以上の人々が集まった。
「シルクロード」は歴史的に幾つものルートがあり、海のシルクロード(海洋交易ルート)から現代の鉄のシルクロード(大陸横断鉄道のルート)まで、応用範囲が広いのが特徴だ。このプロジェクトにはヨーロッパから中国、モンゴル、日本まで広範囲の国々が関わっているが、アフリカの北部やバングラデシュなども深い関心を寄せている。ユネスコは、世界遺産を個別に認定するのではなく、ルートでの認定を検討中とのことで、これもUNWTOの方針に同調した動きだ。
また、中央アジアのカザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5ヶ国では協同体制でシルクロードプロジェクトに取り組んでいる。しかし、この5ヶ国はビザの入手や入国手続きの煩雑さ、英語の道路表記などのインフラ面の課題が多い。これを改善すべく、1ヶ国のビザで他の4ヶ国のビザが不要にするなどの便宜をはかることが国家レベルで検討されている。中央アジアはシルクロードの中でもロマンに満ちたエリアだが、個人旅行はしばらくの間は難しく、旅行会社の介在する余地もあるだろう。
日本では1980年代にNHKのドキュメンタリー番組をきっかけに「シルクロード・ブーム」が巻き起こったが、昨年その一部がBSで再放送され、シルクロードをめぐる新たな動きが出てきている。大手旅行社でも「シルクロード」をキャッチフレーズにした中国へのツアーを取り上げており、ユネスコのシルクロードの「ルート」認定が本格化すれば、新たなブームが起こる可能性も期待できるだろう。