海外渡航者10億人超時代に直面する諸問題-ITBベルリンより

  • 2012年3月29日
広々とした商談コーナーを設けて復興をアピールするタイのブース

 3月9日から11日まで開催された第46回「ITBベルリン」には、約17万3000名が参加。世界187ヶ国から1万644社が出展し、参加者数、出展社数、契約締結率とも前年を上回った。世界最大規模の旅行博であるITBベルリンは年々規模を拡大傾向にあり、出展ブースや会場で繰り広げられるセミナー、ワークショップ、ピーアールイベントを見ると、その時節の世界の旅行業界の動向が見えてくる。ITBベルリン会場で垣間見た、海外渡航者数が全世界で10億人を超えると予想される今年のトレンドともいえるポイントをまとめた。




寄稿:宮田麻未


安全と復興を訴える“政治的”な動き

シンプルで明るいデザインのギリシャのブース

 今回のITBベルリンの展示には、ヨーロッパの経済危機、エジプトやチュニジアの政変、タイや日本などの大規模な自然災害など、2011年に世界で起こったさまざまな状況が明らかに反映されていた。今さらだが、旅行は「社会の平和」や「自然環境の平穏」が保たれてこそのものであると、改めて考えさせられた。

 とりわけエジプトは大規模なオープニングセレモニーやレセプションのパートナー(スポンサー)となり、会場にも特別展示エリアを確保するなど、「エジプトは安全。より旅行しやすい自由な国になった」と強くアピールしていた。ギリシャも、展示エリアの大きさや、ことさら明るいイメージのデザインに、ギリシャ渡航そのものの安全さはもちろん、旅行業界に対してもビジネスの健全さを強調する意図が感じられた。

 一方、日本のブースは桜や富士山、新幹線といった例年通りのイメージをディスプレーに使っていたが、現況を考えると「世界の人々の援助や励ましに感謝する」メッセージや、「私たちは前向きに進んでいます。私たちに会いに来てください!」とったような積極的な訴えかけが伝わるようなデザインも必要だったのではないだろうか。

eトラベルの本格化への対応

eトラベル関連の展示で、特に注目を集めていたトリップアドバイザーのブース

 展示でもワークショップのテーマでも、今回も大きく取り上げられていたのがインターネット関連の展示だ。ホテルなどの予約プロセスの効率化の問題から、いわいる「体験者の口コミ」の真実性や効果、ステルスマーケティングの危険性、ウェブページのデザインのポイント、ソーシャルメディアの扱い方などまで、ネット関連のビジネス展開の問題点が幾つも上げられている。

 しかし、数年前の「ネット時代に乗り遅れるな」という危機感や、モバイル化によって旅行業界のビジネスモデルが大きく変わるという“煽り”のような論調ではなく、むしろ落ち着いてネットによる収益の内容、利益率を見直すべきであるという指摘が多かったのが印象的だった。とりわけ、iPadのレンタルや、サイトを通しての割引クーポンの配布などをどのようにビジネスにいかしていくのかという課題には、多くの人々が関心を寄せているようだ。

 展示会場でも、ウェブ関連のブースの周辺にはいつも多くの人が集まっており、iPadを用いてウェブ上のビジネス展開を体験してもらおうとする展示など、さまざまな工夫が感じられた。