「想定外」は責任逃れ、危機後の事業継続のために-JATA経営フォーラム

  • 2012年3月6日

 昨年は、「想定外」という言葉が飛び交った1年だった。東日本大震災後の大津波や原発事故、それに伴う都内の交通網混乱や計画停電、そしてタイの大洪水による工業団地の冠水とそれに伴う製造停止。いずれも「想定外」のことが起こり、それが連鎖していく様をつぶさに見つめた年だったといえよう。企業として、有事の際のリスクマネジメントは、いよいよ重要となっている。しかしこの分野において、日本は「ガラパゴス化している」というのは、JATA経営フォーラム2012分科会Dの講師、川村雅彦氏。防災に留まらない事業継続を見据えたリスクマネジメント、すなわちBCP/BCM(Business Continuity Plan/Business Continuity Management=事業継続計画)について知っておくことは、業種を問わず今後の企業にとって必要不可欠だ。


「想定外」は連鎖する

 どんなに大きな地震や洪水が来ようとも、経営者が「想定外」を口にするのは責任逃れだと川村氏は語る。同氏はニッセイ基礎研究所で持続可能な社会を作るための研究をしている上席主任研究員。この日は企業のリスクマネジメントという観点から、「想定外」をなくすための新しいBCP/BCMがテーマとなった。

 まずは、東日本大震災(3.11)とタイの大洪水を検証してみよう。3.11は、「日本がこれまで経験したことのない広域かつ巨大な複合連鎖災害だった」と川村氏はいう。想定外の巨大地震が発生したことで、想定外の巨大津波と原発事故という二次災害が起こり、やがて交通網や物流網の寸断、放射能汚染、電力不足、風評被害といった三次災害を生み出した。あらゆる想定外が次の想定外につながり、想定外が連鎖していったのだ。

 こうした想定外の連鎖の裏に、BCPの欠如があると川村氏は指摘する。つまり、「既存のBCPはM9.0未満の地震に対して策定されており、二次・三次災害に対するBCPは皆無だった。多くの企業がそれ自体を想定しておらず、震災後の企業は業務や事業の復旧・継続をすることができなかった」というのだ。

 また、タイの洪水については、50年に一度の未曾有の豪雨が想定外の大洪水をもたらした。北部ダムの満水放流も加わり、洪水がタイ中部に南下して工業団地の堤防を越え、その一部が決壊したことも想定外だ。これにより、工場の冠水という直接被害だけでなく、部品の調達先や顧客といったバリューチェーンが間接被害を受け、日系企業を含む多くの工場で減産や操業停止を余儀なくされたのである。

 しかし川村氏は、ここでもBCPの欠如を指摘する。なぜなら、このエリアはデルタ地帯の低地であり、程度の差こそあれ毎年6月から10月の雨季には洪水が発生するからだ。つまり、洪水はある日突然襲ってきたものではないということである。