読者レポート、ブータンの魅力とヘルスツーリズムの可能性

  • 2012年2月17日

見えない需要はFIT化する
ヘルスツーリズムとその可能性

ブータンでは西洋医学もあるが、自然療法・伝統療法が専門医のもとで普通に行われており、全て国営で医療費は全額国費で賄われる。写真は研究所併設の伝統医療院  ヘルスツーリズムが唱えられるようになって既に10年ほどになり、他のアジアの国々でもそれに取り組む専門エージェントも登場して久しいが、日本でヘルスツーリズムに取り組んでいるような旅行会社をほとんど見かけない。

 想定されているヘルスツーリズムの経済規模は非常に大きい。高齢化・医療費の上昇・医療制度・健康保険システムの崩壊などこの先の不安は大きく、「ピンピンコロリ」(元気で長生き逝く時はコロリ)の合言葉も相まって一人ひとりの健康意識が高まり、ヘルスツーリズムのデマンドは高まっているわけだ。

伝統医療院ではヒマラヤのハーブ(高山植物・薬草)をスティームで患部に当てる療法が行なわれている。ハーブの中には金よりも価格の高いものもあるとか  そもそもスパ利用者のデータを見ると、健康意識が高く、一般的に高学歴・高収入のマーケットとなっている。鶏が先か卵が先かの話になるが、業界の取り組みが無い以上、そのマーケットは結果的にFIT化していく。実際、個人でウエルネスリゾート(ヘルスリゾートともいう)を利用する日本人は、直接予約をすることが多い。

ブータンの農業では農薬が使われることはまずないため、安心して食べられる  流行の後追いで生きてきた日本の旅行業界だが、ITの平準化で個々人が旅行手配できる時代になった今、後追いで大丈夫という時代ではないだろうと考えると、自分達が見えていない需要を如何にしてビジネスとしていくかを真剣に考えた方が良い。幸いなことに、ブータンは旅行会社を通さないと旅行手配が難しい国。温泉や伝統療法、オーガニックな食事、美しい自然のなかでの山歩きなど、ヘルスツーリズムに適したさまざまな素材がある。それぞれのものを組み合わせてきちんとした形で売れば、寺を見るだけのような単なる観光ではなく、付加価値のある商品造成ができる。旅行会社の存在感を消費者に示すことができる国なのだ。