読者レポート、ブータンの魅力とヘルスツーリズムの可能性
サスティナブルツーリズム先進国ブータン
新たにヘルスツーリズムへ取り組む
ブータンが鎖国状態を解いたのが10年前。経済的には後進国であるが、ツーリズムの戦略はドラスティックにして先進的。ブータン経済省大臣やTCB幹部の話を聞くと、キーワードは「サスティナビリティー」の一言に尽きる。しかし、サスティナブルツーリズムは、世界中が理想としながらも資本の論理優先でなかなか実践できないか、お題目で終わって破壊的な焼畑ツーリズムになってしまっているのが現実である。ブータンはどうしているか。
国民総幸福度を国是とするブータンは必然的に他国とは同じ轍を踏まぬよう、ツーリズムにも制限をかけた。つまり、ブータンを理解するハイエンドな旅行者は大いに受け入れ、伝統や秩序を乱しかねない旅行者はご遠慮いただくということだ。日本でハイエンドというと富裕層マーケットを想定するが、あくまでも知的レベルが高く、デスティネーションを理解するマーケットというグローバルな意味でのハイエンドである。実際、外国人でも3ツ星ホテルからの利用が認められている。
ただし、単に受け入れを広げると、サスティナブルのコンセプトと矛盾が生じる。そこで限られた範囲で付加価値を高め観光収入を増やすものとして、ヘルスツーリズムが必要との認識になったのだ。実は、ブータンのヘルスツーリズムの素材自体は豊富で一級。またブータンに来る旅行者が、ヘルスツーリズムのターゲットと重なる。
ブータンは日本と同じに温浴文化を持っている。ホテルのスパを覗くと4、5人は入れる木の風呂桶があり、石を熱して湯を沸かす。その石の成分が天然温泉の役目となるのだ。とはいえ、スパの技術的なレベルは低く、ブータンの素材が生かしきれていない。独自の伝統、文化、景観、自然、農業、食、伝統医療、宗教などをスパのプログラムに統合する必要がある。ブータンのサスティナブルツーリズムにさらに付加価値を付けるとすれば、それらの素材を有効に生かしたヘルスツーリズムのデスティネーションへと進化させる必要がある。そこでAPSWCとのミーティングが実施された。この先ブータンは、単なる観光からヘルスツーリズムのデスティネーションへと向かうことと思う。