2012年海外旅行市場の背景、中長期成長は警鐘も-JTBF旅行動向シンポジウム

  • 2012年1月17日

「若者とシニアの旅行」に変化の予感
若者が新需要創造の可能性

 次に黒須氏は、性年代別の出国率の変化に言及。震災前の6ヶ月間は、男性の30歳から54歳が多く、ビジネス需要の強さがうかがえるが、震災後6ヶ月間は20歳から35歳の女性の伸びが目立つ。また、主要客層であるシニアは、震災前から60代以上の男女でマイナス推移を示していたが、震災後は60歳から65歳の男女が0.8%減とマイナス幅が2倍以上に拡大するなど、大きく減少している。

 若者については「旅行離れ」が議論されていたが、黒須氏は「人口減や、就職難などの影響による一時的な冷え込みだったのでは」とし、「実は若者層は旅をしている」と説明する。例えば、全国の高速輸送バスの輸送人員は2010年に600万人となり、5年間で30倍に拡大。この市場の3分の1を占める大手ウィラートラベルの約9割が30代以下であり、40代以上は12%だ。また、インターネットでの予約が97%であり、直近1ヶ月以内の利用者の57%が初めての利用だった。

 この若者の動きから「若い人が旅行をしない理由で『お金がない』というのは大きかった。ひょっとすると安いものに対する需要がある」とし、「これはLCCの青写真なのでは。LCCは単純な議論で終わらないが、安いから動くということはありえる。若者がうまく利用することもある」とする。黒須氏は2012年の展望の中でLCCについて、国内就航で市場の理解が広まれば、海外旅行も変えていく可能性があると述べており、近距離で既存の航空会社やスケルトンのパッケージ商品との共存が続くと見ている。

 一方、シニアについては「震災後、大きく変わったという感触がある」と話す。黒須氏は旅券発給数をマーケット指標の1つとしているが、シニアの旅券発給数は震災後、大きく減少。特に50代以上のの女性は15%減となっており、海外旅行者数が2ケタ近くまで回復した8月においても、シニアに関しては微増に留まっている。「シニアの人口が増えるから旅行者数が伸びているが、マインドとしてはどうか。気をつけておかないと、ある日突然変わることになる」と、中長期的な動向に警鐘を鳴らす。