現地レポート:中国、冬の成都・九寨溝-新たな商品造成のチャンス
市場拡大と収益性高い中国ツアーの創出を(1)
九寨溝にプラスする冬の観光、成都とその近郊
従来の九寨溝のツアーは、もうひとつの世界遺産、黄龍と組み合わせて作られることが多いが、黄龍は冬季、道路が閉鎖する可能性があるため、パッケージツアーに組み込むことは難しい。今回の研修旅行では、黄龍に代わる観光ポイントを見つけることも、目的のひとつとなっていた。
視察した中で、現地オペレーションを担当した四川海外富長国際旅行社が新商品というのが、綿竹年画村だ。年画とは、中国の風習で1年の幸福や無病息災を願って正月に玄関に飾る絵画のこと。中国には「三大年画」に数えられる地があり、綿竹はそのひとつとなっている。
綿竹は伝統的な農村で、農作業が減る冬に年画を書くようになった。2008年の四川大地震で被害を受け、年画村は観光開発を意識して建てられたものだが、白壁に大きな絵が描かれた家の前で、村の人々がお茶を飲んだり、マージャンをして楽しんでいたりする様子は、昔ながらの中国の農村風景をほうふつとさせる。観光は年画村の博物館での年画観賞と、年画の色付け体験、この地方独特の牛肉の煮込み鍋のランチのほか、農家を訪問し、生活体験をすることも可能。成都からの日帰りの場合、所要時間は6時間から7時間だ。
このほか、古代四川文明の遺物を展示する金沙遺跡博物館や、古蜀文明の遺跡を展示する三星堆博物館、道教のゆかりの地である青城山、震災から再建した都江堰など、歴史・文化を感じるスポットも多く、各社の客層に応じたツアー造成が可能だ。また、秦の時代の建物を再開発した寛窄巷子や、明清時代の建物を再現した錦里などのレトロストリートは散策とショッピングにうってつけで、「女性向けの成都モノステイも可能性ある」と新商品の可能性を模索する参加者もいた。
視察団の団長の浅川修氏(JATA海外旅行委員会副会長/ANAセールス会長)は、「冬の成都・九寨溝への送客に向けて、必要なことを検証できた。あとはその魅力を日本にどう伝えるのか、それが我々の役割になっていく。参加者にはぜひ、冬の送客の努力をしてほしい」と、締めくくった。
価格ではなく商品開発で市場拡大-冬の成都・九寨溝需要喚起プロジェクト
冬の成都・九寨溝需要喚起プロジェクトは、中国へのさらなる観光需要拡大を目的に、夏の人気観光地である九寨溝で冬の送客も高めるのが目的。今年6月に全日空が(NH)が成田/成都線を就航し、直行便と経由便で成都への路線が太くなったのがきっかけではあるが、日本旅行業協会(JATA)VWC2000万人推進室プロジェクト・マネージャーの山口正氏は、「利益得られるデスティネーション開発が必要」と、プロジェクトの意図を語る。
中国方面では特に冬になると、上海、北京のモノステイで1.98万円や2.98万円の商品が多くなり、価格のみの競争となっている。しかし山口氏は「それだけでは業界が立ち行かなくなる。旅行会社には開発の視点を持って、利益が上げられる商品造成が必要」との考えだ。
同プロジェクトは9月にJATA旅博でセミナーを開催し、研修旅行の実施を発表。10月下旬には研修旅行の参加者予定者と意見交換会を実施し、その上で今回の研修旅行と現地意見交換会の運びとなった。山口氏は「研修旅行だけでなく、実際の商品につなげる活動をする必要がある」といい、今後は業界内と消費者への情報発信を強化していきたい考えだ。
取材:本誌 山田紀子