現地レポート:中国、冬の成都・九寨溝-新たな商品造成のチャンス

  • 2011年12月21日

市場拡大と収益性高い中国ツアーの創出を(1)

視察時は冬本番前の晩秋。うっすらと雪を被る山々と足元の流水、青空との対比が美しい。写真は真珠灘から鏡池への木道  世界自然遺産の九寨溝は、数ある中国の観光地の中でも誘客力のある観光素材のひとつ。ベストシーズンは4月から10月で、日本からのツアーのほとんどがこの時期の送客だが、成都および九寨溝では冬の魅力をアピールしており、もうひとつのシーズンといえるポイントがある。もともと人気の高い九寨溝をフックに、新しい商品展開の可能性がありそうだ。日本旅行業協会(JATA)では今年6月の全日空(NH)成田/成都線直行便就航を機に、冬の成都・九寨溝需要喚起プロジェクトを開始。冬本番に先立ち、11月下旬に今後の送客に向けた現地視察と受入側との意見交換を実施した。



晩秋から冬ならではの景色、観光ポイント

九寨溝の中でも人気のスポットの一つ、五花海。多くの人でにぎわう  九寨溝は四川省の北西部、標高2000メートルから3000メートルの高地にある渓谷で、100以上の湖沼や滝が点在する。その湖の色彩、水の美しさが多くの人を惹きつけるが、その背後に連なる4000メートルから5000メートル級のダイナミックな山々とのコントラストも素晴らしい。夏の緑や秋の紅葉など、それぞれの季節の魅力付けとなっている。

最も深いブルーの色を見せた五彩池  私たちが訪れたのは11月24日、晩秋の頃。遠方の山々の頂や稜線がうっすら雪化粧をし、また違った表情を見せた。参加者からは「空気が澄んでいる秋は、景色がより美しく見えた気がする」という感想も聞かれた。冬になると湖沼周辺が雪で白く彩られ、滝は凍り、よりいっそう清冽で幻想的な風景になるという。

 もうひとつ、この時期ならではのポイントがある。それはゆとりのある観光ができることだ。中国国内ではレジャーとして旅行需要が高まっており、成都文旅集団日本チームのイメージプロモーションマネージャーである張禹氏によると、中国では1970年代に発見された新しい観光地の九寨溝は、特に人気があるという。

秋・冬は木々の葉が落ちているが、視界は広いとの前向きな見方も。箭竹海にて  九寨溝風景管理局副局長の徐英林氏によると、訪問した11月24日の観光客数は4000人だが、11月15日から3月末までのオフシーズンは1日1500人程度。冬の最も需要の高い春節でも、昨年は1日4000人だ。一方、夏のシーズンは、今年の国慶節には1日4万人になった。ピーク時は、人が写りこまないで湖の写真を撮るのは難しいほど混みあうと聞く。今回の視察では混雑による観光や旅行スケジュールへの支障は一切なかったが、五彩池や五花海、真珠灘からのトレイルといった人気スポットでは結構な賑わいがあった。園内のトイレ休憩の時間を考えても、冬の方がゆったりと観光できそうだ。

樹正瀑布から樹正群海へ。水の流れの中に木々がたつ美しい風景が広がる  参加者からは、冬本番の様子を見ていないことを前提にしながらも、「素材としては申し分ない」との意見が多い。ただし、「九寨溝は冬の観光地としての認識が薄い」とし、業界全体としてのプロモーションの必要性を指摘する声も多く聞かれた。