回復の兆しと新たな脅威への対応-通訳案内士のインバウンド考・第7回

  • 2011年11月9日

円高は震災以上の脅威、今だからこそ満足度向上を

食事など「放射能が怖い」影響はないが、値段は気になる  このように少しずつお客様が戻り、不安以上に訪日旅行への期待に胸を膨らませたお客様をガイディングをしているのですが、最近では震災、原発の影響以上に円高の脅威に頭を悩ませています。ガイドはガイド料を下げるようにお願いされない限りは直接の影響は少ないように見えますが、私は円高の今だからこそガイドがいつも以上に頑張らねばならないように思うのです。

 先日、朝ご飯代わりに築地の場外市場でロンドンから来たお客様と海鮮丼を食べた時のことです。お客様は先述したように原発問題など全く気にする様子はなく、新鮮なお魚が食べられると喜んで席につきました。でも、一瞬表情が曇ったのです。1人前700円のどんぶりを前に、世界一物価が高いと言われるロンドンから来ているお客様が「日本はやっぱり物価が高いよね…」と。

 いわずもがな、ですが、円高の影響でお客様は割高感をもってしまいました。円高でなければ意外と東京でも物価は高くないと説明もできますが、初めて来られるお客様にとってみれば、その時のレートが自分の中での基準になります。1年前、10年前のレートがどんなに円安だったとしても、それはお客様には関係のないこと。もし1回目の来日で物価高を感じて日本を楽しんでいただけなかったとしたら、リピーターとして来ていただける可能性が非常に低くなってしまう危険性があるのではないか…。そう思うと、今の時期はいつも以上にガイディングを頑張らないといけない気がしています。

 円高への対応としては、ツアーのコストを削るなど、出来ることは限られています。しかし、品質を落としてお客様の満足度を低下させては台無しです。「日本はちょっと高かったけど、とっても良かったからまた行こう!」そんな気分を感じていただき、2度目、3度目の訪日旅行につなげられるほうが長期的に見ていいような気がします。例えば、リピーターとなって再訪したときに円安に転じていれば、「意外と安く旅行できる!」とうれしいサプライズになり、満足度アップも期待できるのではないでしょうか。

 まだまだ大変な時期が続きますが、工夫と熱意でお客様の満足度を上げ、今のピンチを将来のチャンスに変えていきましょう!


文:旅野朋/通訳案内士(英語)