インバウンド、震災から回復しベストデスティネーションとして発展するには
JATA国際観光フォーラムのシンポジウム「インバウンドツーリズムの早期回復を目指して」では、産官学を代表するインバウンドの有識者が登壇し、震災発生後から現在に至るまでの状況や早期回復に向けた取り組み、さらに今後の発展に向けた課題について議論が行なわれた。そこから見えてきたのは震災や原発問題だけはない、日本のインバウンドツーリズムが抱える根本的、構造的な問題だった。
パネリスト:日本観光振興協会副会長、国際観光旅館連盟会長の佐藤義正氏
沖縄ツーリスト代表取締役社長の東良和氏
観光庁審議官の山田尚義氏
ビコ代表取締役の李碩鎬氏
国内・海外旅行に比べ回復鈍いインバウンド
風評被害は沖縄、韓国までも
観光庁の山田氏が示したデータによると、国内旅行やアウトバウンドと比べてインバウンドの戻りが遅いことがはっきりしている。震災が発生した2011年3月の訪日外客数は前年同月比50.3%減だったのに対し、8月には31.9%減。一方、日本人出国者数は8月に9.1%増、国内旅行者数は7月に7.6%減まで回復している。
震災によるインバウンド不振の原因について国際観光旅館連盟の佐藤氏は「風評が100%」と明言する。「インバウンドはもともと広い範囲の周遊旅行が多く、観光地に関する情報が少ないため、東北または日本という広い範囲で危険地域だと認識されてしまったため」だという。
同様に、沖縄コンベンションビューローの副会長も務める沖縄ツーリストの東氏によると、沖縄でも震災後に原発の影響でインバウンド客が全くいなくなったという。5月の連休から香港方面の回復が見込まれたものの、4月の後半に福島原発事故の危険度がレベル7に引き上げられたことでインバウンドが皆無となったという現状がある。原発から一番遠い沖縄でさえ6月までは風評被害を受けていたのだ。
さらに、風評被害は日本国内だけにとどまらず隣国にも影響を与えた。韓国をデスティネーションとする顧客も取り扱うビコの李氏は「韓国にまで観光客がこなくなった。また、連日報道される震災関連のニュースによって韓国国民も全体的な観光指数が極端に落ちた」という。