東電、観光業の賠償20%減-JATAやANTA支部、請求に向け説明会も

 東京電力は9月21日、福島原子力発電所事故による損害賠償について、法人および個人事業主に対する賠償基準と今後の進め方を発表した。観光業の風評被害については地震や津波などの影響もあるとして、原発事故以外の要因による売上減収率を20%に設定。賠償対象は福島、茨城、栃木、群馬県に事業所がある法人、個人事業主とした。

 売上減収率は阪神淡路大震災のデータをもとに算出したもの。阪神淡路大震災では、発生から3ヶ月の売上増減率は27.6%減、6ヶ月は17.5%減だったが、東日本大震災では3ヶ月で38.0%減、8月までの6ヶ月で20%減と推定した。

 売上減収率の設定に対し、旅行業関係者からは「風評被害による賠償があると期待していなかった。20%で済んだのはまだよい方」という声もある一方で、20%では高すぎると、減収率の引き下げを求める声も聞かれた。また、今回賠償対象が風評被害に拡大したことで、賠償請求する旅行会社は急増する見通し。全国旅行業協会(ANTA)福島県支部によると、会員各社約110社のうち約8割が賠償を請求する見込みだ。

 茨城県支部によると、7月時点で会員約200社のうち36社が東京電力に対し被害概況申出書を提出した。申請時期が短かったこともあり、今回新たに申請する会社が増加するという。会員各社の請求書を取りまとめ、東京電力に提出する予定で、支部で会員各社分の請求用紙を用意しておく予定だ。また、同支部は観光物産関連団体や商業団体約20社からなる茨城県観光物産協会に加盟し、協会として7月以降、賠償対象を茨城県に拡大するよう東京電力に求めており、そうした活動が今回の賠償対象の拡大の一助になったとの考えだ。今後は茨城県観光物産協会としても側面支援を継続していく。

 一方、風評被害による外国人観光客の予約解約に対する賠償では、先に対象となった4県以外の都道府県に観光業を営む事務所を持つ法人および個人事業主が対象。3月11日現在で外国人観光客の予約があり、原発事故により5月末までに解約があった場合に適用される。賠償額は、3月11日現在の予約人数に、原発事故によるキャンセル数と、予約1人あたりの逸失利益額をそれぞれ乗算して求める。


▽旅行関連団体、申請に向け説明会開催も

 東京電力によると今後は9月27日をめどに請求書用紙などの発送や受付を開始し、10月中の支払い開始をめざす考え。こうした動きを受けて、日本旅行業協会(JATA)では10月上旬にも会員向けの説明会を東京で開催し、申請方法や用紙の記入方法などを説明する計画だ。また、ANTAでも対象となる4県の支部ごとに対応を進めている。福島県支部では、10月4日に東京電力とともに説明会を実施する予定だ。また、群馬県支部によると、群馬県と東京電力が同支部、JATA、群馬県バス協会を対象とした合同説明会を県内4ヶ所で実施する。旅行業界単独での説明会も10月に実施できるよう調整しているという。