トップインタビュー:スカンジナビア航空アジア太平洋地区総支配人の二ルソン氏と前支配人のヨハンソン氏
旅行業界との協力関係をさらに強化、昼間時間帯の羽田就航にも強い意欲
スカンジナビア航空(SK)アジア太平洋地区総支配人に7月1日付けで就任したレイフ・ニルソン氏。「オープンに話し合える環境をつくり、一緒にビジネスを発展させていきたい」と、日本の旅行会社との協力関係を強調する。一方、同職から離れるオーレ・ヨハンソン氏は「アジア太平洋地区のなかでも最も重要な市場」と日本を位置づける。発着枠拡大後の羽田就航や全日空(NH)との協力関係強化など、日本でのビジネス拡大に意欲的な姿勢を示す両氏に、日本市場の現状ならびに今後の戦略などについて話を聞いた。(聞き手:本誌編集長 松本裕一)
-まず、新しくアジア太平洋地区総支配人に就任されたレイフ・ニルソン氏のこれまでの経歴についてお聞かせください
レイフ・ニルソン氏(以下、敬称略) スカンジナビア航空(SK)に入って24年になるが、その間、さまざまな部門で働いてきた。ここ12年はアジアが中心。まずバンコクに赴任し、その後2003年に日本に異動、日本および韓国の貨物部門を担当した。2007年に中国で同じくグループの貨物部門を担当したのち、2009年に貨物部門のアジア地区マネージャーに就任、日本からドバイまでを統括した。直近の8年間は貨物に従事したが、それ以前は旅客部門や財務部門にも携わった。今回で2度目の日本赴任になるが、再び日本で仕事ができることを家族共々とても喜んでいるところだ。
-在任中の目標をお聞かせください
ニルソン まず、前任者のオーレ・ヨハンソンが積み重ねてきた実績を引き継げることは幸運なことだ。アライアンスパートナー、カスタマー、サプライヤーなどさまざまな組織とビジネス関係を深めてくれた。私の目標はその関係を維持し、さらに発展させていくことだと思う。SKの利用者、旅行会社、駐日大使館、日本政府、NHをはじめとするスターアライアンス・パートナーなどとより強固な関係構築に努めていきたい。
-大震災以降の日本市場の現状をどのように認識していますか
オーレ・ヨハンソン氏(以下、敬称略) 3月11日の東日本大震災直後は、日本発着の需要は大きく落ち込んだ。しかし、日本から欧州への旅客はすでに回復し、通常のレベルに戻っている。ビジネス、レジャー両方とも好調で、ほぼ満席に近い状況だ。一方、欧州から日本への旅客需要は徐々に戻りつつあるも低調な状況が続いている。
今年の夏もおおよそ同じ傾向が続くのではないか。まだ予測するには早いかもしれないが、夏以降の日本市場全体の旅客需要は再び活気を取り戻すのではないかと思っている。今年後半については楽観的な見方だ。
ニルソン SKとしては日本の状況はそれほど深刻ではなく、レジャー、ビジネスどちらにおいても日本は問題ないということを伝え続けていく必要があると思う。
-御社は日本市場をどのように位置づけていますか
ヨハンソン SKのアジア太平洋地区は日本をはじめ中国、韓国、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランドをカバーするが、そのなかでも日本は最大市場だと位置づけている。長期的に見れば、中国やインドなど潜在性の高い市場はあるが、日本は政治的にも経済的にも安定している優良な市場だ。SKがアジア太平洋地区のオフィスを東京に置いているのも、日本を重要な市場だと考えているからにほかならない。
ニルソン 私も同感だ。震災後の4月にSKの社長が来日したのもその表れだろう。SKにとって今後も変わらず大切な市場であるとはっきり言える。
-日本市場を活性化させる新たな戦略があれば、教えてください
ヨハンソン まず羽田空港への乗り入れが重要なテーマになる。ビジネス客にとって羽田は都心に近い便利な空港。また、成田とは違い、羽田は日本各地へネットワークが広がっている。しかし、現在の深夜早朝枠では、現在のSKの成田便と比較しても魅力的なサービスにはならない。やはり、昼間時間帯の発着枠がほしい。政府間の交渉次第だが、まずSKがその枠を利用できる航空会社に指定されることを望む。もしそうなれば、羽田便を申請することになるだろう。
ニルソン 成田便について言えば、通常なら冬期スケジュールで週6便に減らすが、日本市場の回復が期待されることから、今年の冬は週7便を維持していきたいと思っている。
-中東の航空会社が成田に就航するなど、日本・アジア/欧州間での競争が激化しています。この状況をどう見ていますか
ヨハンソン 確かに直行便にしろ、北欧あるいは中東を経由する便にしろ、アジアと中欧/南欧間の競争は激しくなっていると思う。しかし、SKは日本からコペンハーゲンに直行便を飛ばす唯一の航空会社。コペンハーゲンから北欧あるいはスカンジナビア諸国に豊富なネットワークを持っている。また、コペンハーゲン空港は過去に何度も世界のベスト空港に選ばれたことがあり、乗り継ぎ時間でも、サービスの質の点でも優れていることも大きなメリットだと思う。
-燃油サーチャージが市場に与える影響についてはどうお考えですか
ヨハンソン 燃油サーチャージを課さなければならないのは残念なことだと思うが、原油価格は高止まりしており、航空会社のコストも上がっている。これをどこかで補わなければならない。燃油サーチャージはどの航空会社も同じように課しているので、それが競争上、不利になるとは思わない。また、シンガポール・ケロシン価格を基準に透明性をもって燃油サーチャージを決めているので、それを自社に有利に操作することはありえない。難しいのは燃油サーチャージ以外の価格設定。唯一我々が調整できる部分であり、そこで競争力が問われてくるからだ。
-最後に日本の旅行業界へのメッセージをお願いします
ヨハンソン 日本の旅行会社はSKにとって最も大きな販売チャンネル。私は在任中、彼らとの関係を維持し、さらに強化してきた。新しく就任するニルソンもこの方向性を受け継ぐだろう。SKのサービス、プロダクト、そしてスタッフに自信を持っている。今後さらに協力関係を発展させていけるだろう。
ニルソン 前回日本で仕事をした時は、近鉄、日本通運など貨物部門のエージェントと緊密な関係を築いた。大切なのは信頼関係だと思う。今回も、オープンに話し合える環境をつくり、一緒にビジネスを発展させていければと思っている。
-ありがとうございました