AISO、原子力損害賠償紛争審議会へ賠償請求を提出-新観光ルート開発も
アジアインバウンド観光振興会(AISO)は6月16日に年次総会と現地事情報告会を開催し、原発損害賠償請求の提出やアジア各国からの訪日旅行の現状などを報告した。AISO理事長の王一仁氏は、「東日本大震災から3ヶ月経ったがホテルも旅行会社も困っている状態」と話し、「こういう時こそ研修などを実施して、日本のインバウンド市場をなんとかよくしていきたい。皆の力をあわせて頑張りたい」と訴えた。今後、首都圏の訪日旅行回復をめざし海外メディア向けのFAMツアーを実施するほか、ツアーガイド養成に向けて取り組む。また、各国からの報告ではこれまでのゴールデンルートを含まない観光ルートが注目され始めていることなども話された。
東京電力に対する原子力損害への賠償請求では、4月25日に抗議文を提出。今後、会員向けに損害調査表を配布し、会員の状況を把握、調査したうえで原子力損害賠償紛争審議会に対し賠償請求をおこなう。
一方、FAMツアーでは、タイやミャンマー、マレーシア、中国、香港、台湾などのメディアを招き、7月11日から6日間の日程で、千葉、山梨、静岡、神奈川、東京をめぐる。今回は、各自治体とAISOが協力し、観光名所の紹介だけでなく安全面での取組みについてアピールする内容とした。単なるデータ、情報提供で終わらせるのではなく、実際に体験、確認したことを発信してもらう。各県や自治体、サプライヤーが単体では実施するのが難しいことも、広域的に取り組むことで実現させた。
各国からの現状報告では、日本の新たな観光ルート開発について期待する声も聞かれた。中国からの訪日旅行を多く取り扱うアメガジャパンによると、中国の温家宝首相の来日や、訪日旅行の旅行代金を安く設定していることもあり5月3週目から動きが出始めている。さらに、関東を含めない、ゴールデンルートでない沖縄、九州、北海道といったコースが注目されているという。特に沖縄は7月1日に発行する数次ビザの影響で商品ラインナップ拡充、FITツアーの増加に期待を示す。
また、台湾からの訪日旅行を扱う太陽トラベルによると、現在、中部イン中部アウト、中部イン関空アウトによる立山黒部のツアーなどが人気だという。震災以降、こうした新たな観光ルートが注目され商品開発につながることで、秋以降の需要回復、正常な料金での商品提供などの期待が示された。