現地レポート:中国・西安、世界園芸博覧会の開幕間近、会場と周辺観光視察
西安・世界園芸博覧会の開幕にあわせ、大視察団を派遣
古都の歴史と文化と園芸を楽しむ「中華文化の旅」
4月28日から10月22日まで、西安で「園芸・造園」を対象とした世界園芸博覧会が開催される。西安市は2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博に次ぐ世界的イベントとして5年前から誘致に取り組み、国内外から1200万人、そのうち日本から10万人の来場者を見込んでいる。もともと西安は古都として歴史・文化をテーマにした観光素材が多いが、さらに今年は園芸博を加えた新しいツアー造成が可能だ。3月9日から実施された中国国家観光局主催の100名規模の研修ツアーに参加し、建設中の会場を視察した。
1200万人の参加を見込む一大イベント
海外からの出展数では日本が最多に
国際園芸博覧会は国際園芸家協会(AIPH)が承認する博覧会で、これまで30回以上を開催する歴史ある博覧会だ。日本でも過去3回開催されており、1990年の大阪花博では約2300万名が来場するほどの人気を集めた。中国では過去2回開催されおり、規模の大きかった1999年の昆明での博覧会には日本から多数のツアーが組まれた。今回は中国国家観光局の2011年のテーマである「2011年中華文化の旅(中国を訪れ、文化を味わう)」の最重要イベントのひとつにもなっており、昆明以上の来場者を見込んでいる。
3月9日の時点で世界から109の都市と機構の出展が決定しており、日本からは奈良市、北海道、高萩市が参加。海外からの出展数では日本がトップだ。1200万人という多数の集客を見込むため、上海万博と同様に入場の整理券の配布を予定しているが、枚数は検討中。また、集客に向けて様々な施策を実施する予定で、視察旅行中に開催された旅行会社向けの説明会では、日本向けのキャンペーンとして、西安市観光局局長の周愛全氏が西安での宿泊を前提に、チャーター便での100名以上の送客に対し1名あたり100元、もしくは航空機1機内に100名の団体の送客で1万元を奨励金をとしてサポートする施策を発表した。
また、中国国家観光局(東京)首席代表の范巨霊氏は「(上海万博と比較して)西安は航空便が少ないが、園芸博覧会は日本でも馴染みがあるので5万人から10万人の観光客を期待している」と表明。「この園芸博覧会をきっかけに日本の方々に西安をもっと知ってほしい。旅行会社には園芸博覧会と西安の文化遺産を組み合わせた魅力的な商品を作ってほしい」と呼びかけた。
ちなみに、園芸博は「天神長安、創意自然」として都市と自然の調和・共存をテーマとし、「グリーンは時代をリードする」を理念としている。会場のある西安市サンバ生態区はかつて砂利採取場であり、汚染された川やごみに囲まれた場所であった。しかし、長年の川の浄化と生態管理によって周辺は豊かな緑が見られるようになったという。園芸博が環境保護理念を体現していることもアピールポイントで、環境保護や省エネなどを重視する企業などの団体旅行のとしても考えられるだろう。
敷地内を回るだけで3時間
じっくり巡るなら5時間
会場の敷地面積は大阪の花博の約2.5倍という418ヘクタール。そのなかに各出展者の園芸展示をはじめ、湖や4つのランドマークタワー、中国や東南アジア、ヨーロッパの風景を模した3つのスペシャルゾーンなどが作られており、敷地内を回るだけで3時間、じっくり巡るなら5時間程度の時間がかかるという。視察時は開幕の約1ヶ月半前であったため、会場の完成度は8割から9割程度。建築や造園は途中で、まだ園芸博の主役である花や草木が植えられていなかった。そのため殺風景に見えるが、完成すれば花々や草木の色彩が加わり、素晴らしい庭園が見られるだろう。
4つのランドマークタワーのうち、園芸博のシンボルとなるのが、高さ約100メートルを誇る「長安塔」。最上階には園内全体を一望できる展望台があり、人気スポットとなりそうだ。1日の入場人数を制限することが検討されており、そうなれば長安塔の整理券はプレミアム券となるだろう。そのほか、様々な気候帯の植物などを展示する温室の「創意館」、エコ、省エネをテーマにした「自然館」、博覧会のメインゲートとなる「広運門」がある。また、陝西省の秦嶺に生息するパンダ、トキ、キンシコウ、ターキンなど希少動物が見学できる施設があることも、環境保護をアピールする今回の園芸博ならではのポイントとして添えておきたい。
ゲートは5ヶ所に分かれており、そのうち観光客が利用できるゲートは一般用と団体用の2ヶ所のみ。団体専用の駐車場が隣接している。また、飲食施設は3つのスペシャルゾーンにそれぞれ1つずつ設けるほか、日によってはワゴンの追加も検討している。広大な園内には入場者のアクセスを考慮し、誰でも利用できる電動カート(5回の回数券で25元)を運行。できる限り歩車分離の通路を設定し、歩行者の危険がないようにしている。景観デザインの観点から園内には一部、アーチブリッジのような起伏のある個所もある。そういう場所にはボランティアを配置して、補助をしてもらうことも可能だという。
西安市街から会場までは、車で約30分強。ツアーはバスでの移動になるが、FITが利用できるシャトルバスが市内から運行される。近隣の宿泊施設は施設内に建つVIP専用のホテルと、会場から車で15分ほどの「ケンピンスキーホテル西安」のみ。このほかは西安市街のホテルを利用することになる。
園芸博と組み合わせる
文化観光都市・西安の観光素材
西安は漢の時代に長安と名付けられ、秦や唐など13の王朝が都をおいた古都。シルクロードの起点の街としても知れている。カイロ、アテネ、ローマと並び世界四大古都のひとつとして中国文化発祥の地といわれ、日本でも有名な歴史的建造物が多く存在する。
そのひとつが、兵馬俑だ。秦の始皇帝が死後の世界でも自分を守らせるために作らせたもので、6000体の歩兵の銅像が並ぶ1号坑は、始皇帝の権力の大きさを物語るに十分な光景だ。像の高さは170センチから190センチで当時の平均身長よりも高い。これは諸説あり、体格がよく身長が高い人が軍隊に入った、実際の身長よりも10センチほど高くして作ったなどいわれている。銅像はすべて顔や姿が異なっており、細部まで興味深い。
また、兵馬俑を訪れた際は、華清池も立ち寄りたい。西安から東に約30キロ、兵馬俑から車で20分ほどにあり、旅行商品造成がしやすい。ここは紀元前の周の時代から、温泉地として歴代の統治者が離宮御所とした。特に唐の玄宗皇帝と楊貴妃が過ごした場所として有名で、1982年に唐代華清宮御湯の遺跡が発見された。現在の建物は当時を再現したもの。2人の愛情ストーリーを演じる歴史舞踊劇「長恨歌」が毎晩上演されている。ガイドによると年間の観光客数は約200万人で、中国のゴールデンウィークにあたる5月のメーデーの連休時には1日1万人以上の観光客が訪れるという。
このほか、郊外には唐の時代の隆盛を再現したテーマパーク「大唐芙蓉園」、さらに市街から100キロ以上離れた近郊には、兵馬俑と同じく考古的に重大な発見とされる釈迦の指の遺骨が保存された寺院の法門寺や、中国史上唯一の女帝である則天武后の墓である「乾陵」などの見どころもある。
西安は近年、重工業の発展により経済成長が著しく、街には高層マンションが建ち並ぶ。街中には園芸博のポスターが見受けられ、イベントにかける西安市の期待が伝わってくる。視察に参加した旅行会社のスタッフは「ホテルや道路など、ハードの受け入れが整っている」「これを機会に西安を観光地として確立させようという意思が感じられる」と話し、上海万博と同様に多数の送客を期待。一方で、「上海より遠いので3泊4日くらいでないと商品が造りにくい」「西安と園芸をどう結び付けていくか」との課題も聞こえた。商品造成の工夫が求められるが、園芸博をきっかけに、来年以降の送客にもつなげられる取り組みを期待したい。
古都の歴史と文化と園芸を楽しむ「中華文化の旅」
4月28日から10月22日まで、西安で「園芸・造園」を対象とした世界園芸博覧会が開催される。西安市は2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博に次ぐ世界的イベントとして5年前から誘致に取り組み、国内外から1200万人、そのうち日本から10万人の来場者を見込んでいる。もともと西安は古都として歴史・文化をテーマにした観光素材が多いが、さらに今年は園芸博を加えた新しいツアー造成が可能だ。3月9日から実施された中国国家観光局主催の100名規模の研修ツアーに参加し、建設中の会場を視察した。
1200万人の参加を見込む一大イベント
海外からの出展数では日本が最多に
国際園芸博覧会は国際園芸家協会(AIPH)が承認する博覧会で、これまで30回以上を開催する歴史ある博覧会だ。日本でも過去3回開催されており、1990年の大阪花博では約2300万名が来場するほどの人気を集めた。中国では過去2回開催されおり、規模の大きかった1999年の昆明での博覧会には日本から多数のツアーが組まれた。今回は中国国家観光局の2011年のテーマである「2011年中華文化の旅(中国を訪れ、文化を味わう)」の最重要イベントのひとつにもなっており、昆明以上の来場者を見込んでいる。
3月9日の時点で世界から109の都市と機構の出展が決定しており、日本からは奈良市、北海道、高萩市が参加。海外からの出展数では日本がトップだ。1200万人という多数の集客を見込むため、上海万博と同様に入場の整理券の配布を予定しているが、枚数は検討中。また、集客に向けて様々な施策を実施する予定で、視察旅行中に開催された旅行会社向けの説明会では、日本向けのキャンペーンとして、西安市観光局局長の周愛全氏が西安での宿泊を前提に、チャーター便での100名以上の送客に対し1名あたり100元、もしくは航空機1機内に100名の団体の送客で1万元を奨励金をとしてサポートする施策を発表した。
また、中国国家観光局(東京)首席代表の范巨霊氏は「(上海万博と比較して)西安は航空便が少ないが、園芸博覧会は日本でも馴染みがあるので5万人から10万人の観光客を期待している」と表明。「この園芸博覧会をきっかけに日本の方々に西安をもっと知ってほしい。旅行会社には園芸博覧会と西安の文化遺産を組み合わせた魅力的な商品を作ってほしい」と呼びかけた。
ちなみに、園芸博は「天神長安、創意自然」として都市と自然の調和・共存をテーマとし、「グリーンは時代をリードする」を理念としている。会場のある西安市サンバ生態区はかつて砂利採取場であり、汚染された川やごみに囲まれた場所であった。しかし、長年の川の浄化と生態管理によって周辺は豊かな緑が見られるようになったという。園芸博が環境保護理念を体現していることもアピールポイントで、環境保護や省エネなどを重視する企業などの団体旅行のとしても考えられるだろう。
敷地内を回るだけで3時間
じっくり巡るなら5時間
会場の敷地面積は大阪の花博の約2.5倍という418ヘクタール。そのなかに各出展者の園芸展示をはじめ、湖や4つのランドマークタワー、中国や東南アジア、ヨーロッパの風景を模した3つのスペシャルゾーンなどが作られており、敷地内を回るだけで3時間、じっくり巡るなら5時間程度の時間がかかるという。視察時は開幕の約1ヶ月半前であったため、会場の完成度は8割から9割程度。建築や造園は途中で、まだ園芸博の主役である花や草木が植えられていなかった。そのため殺風景に見えるが、完成すれば花々や草木の色彩が加わり、素晴らしい庭園が見られるだろう。
4つのランドマークタワーのうち、園芸博のシンボルとなるのが、高さ約100メートルを誇る「長安塔」。最上階には園内全体を一望できる展望台があり、人気スポットとなりそうだ。1日の入場人数を制限することが検討されており、そうなれば長安塔の整理券はプレミアム券となるだろう。そのほか、様々な気候帯の植物などを展示する温室の「創意館」、エコ、省エネをテーマにした「自然館」、博覧会のメインゲートとなる「広運門」がある。また、陝西省の秦嶺に生息するパンダ、トキ、キンシコウ、ターキンなど希少動物が見学できる施設があることも、環境保護をアピールする今回の園芸博ならではのポイントとして添えておきたい。
ゲートは5ヶ所に分かれており、そのうち観光客が利用できるゲートは一般用と団体用の2ヶ所のみ。団体専用の駐車場が隣接している。また、飲食施設は3つのスペシャルゾーンにそれぞれ1つずつ設けるほか、日によってはワゴンの追加も検討している。広大な園内には入場者のアクセスを考慮し、誰でも利用できる電動カート(5回の回数券で25元)を運行。できる限り歩車分離の通路を設定し、歩行者の危険がないようにしている。景観デザインの観点から園内には一部、アーチブリッジのような起伏のある個所もある。そういう場所にはボランティアを配置して、補助をしてもらうことも可能だという。
西安市街から会場までは、車で約30分強。ツアーはバスでの移動になるが、FITが利用できるシャトルバスが市内から運行される。近隣の宿泊施設は施設内に建つVIP専用のホテルと、会場から車で15分ほどの「ケンピンスキーホテル西安」のみ。このほかは西安市街のホテルを利用することになる。
園芸博と組み合わせる
文化観光都市・西安の観光素材
西安は漢の時代に長安と名付けられ、秦や唐など13の王朝が都をおいた古都。シルクロードの起点の街としても知れている。カイロ、アテネ、ローマと並び世界四大古都のひとつとして中国文化発祥の地といわれ、日本でも有名な歴史的建造物が多く存在する。
そのひとつが、兵馬俑だ。秦の始皇帝が死後の世界でも自分を守らせるために作らせたもので、6000体の歩兵の銅像が並ぶ1号坑は、始皇帝の権力の大きさを物語るに十分な光景だ。像の高さは170センチから190センチで当時の平均身長よりも高い。これは諸説あり、体格がよく身長が高い人が軍隊に入った、実際の身長よりも10センチほど高くして作ったなどいわれている。銅像はすべて顔や姿が異なっており、細部まで興味深い。
また、兵馬俑を訪れた際は、華清池も立ち寄りたい。西安から東に約30キロ、兵馬俑から車で20分ほどにあり、旅行商品造成がしやすい。ここは紀元前の周の時代から、温泉地として歴代の統治者が離宮御所とした。特に唐の玄宗皇帝と楊貴妃が過ごした場所として有名で、1982年に唐代華清宮御湯の遺跡が発見された。現在の建物は当時を再現したもの。2人の愛情ストーリーを演じる歴史舞踊劇「長恨歌」が毎晩上演されている。ガイドによると年間の観光客数は約200万人で、中国のゴールデンウィークにあたる5月のメーデーの連休時には1日1万人以上の観光客が訪れるという。
このほか、郊外には唐の時代の隆盛を再現したテーマパーク「大唐芙蓉園」、さらに市街から100キロ以上離れた近郊には、兵馬俑と同じく考古的に重大な発見とされる釈迦の指の遺骨が保存された寺院の法門寺や、中国史上唯一の女帝である則天武后の墓である「乾陵」などの見どころもある。
西安は近年、重工業の発展により経済成長が著しく、街には高層マンションが建ち並ぶ。街中には園芸博のポスターが見受けられ、イベントにかける西安市の期待が伝わってくる。視察に参加した旅行会社のスタッフは「ホテルや道路など、ハードの受け入れが整っている」「これを機会に西安を観光地として確立させようという意思が感じられる」と話し、上海万博と同様に多数の送客を期待。一方で、「上海より遠いので3泊4日くらいでないと商品が造りにくい」「西安と園芸をどう結び付けていくか」との課題も聞こえた。商品造成の工夫が求められるが、園芸博をきっかけに、来年以降の送客にもつなげられる取り組みを期待したい。
取材協力:中国国家観光局、西安市観光局、2011西安世界園芸博覧会執行委員会、
西安世界園芸博覧会準備弁公室
取材:大宗憲知