ITソリューション特集:コラム<ネット集客の改善技術>(5)

  • 2010年12月8日
コラム:第5回 検索キーワード攻略 旅行会社・航空会社編

 検索結果ページを舞台にした集客は、今ではウェブマーケティングのセオリーのひとつとして広く活用されるようになりました。これをうまく実践するには、まずユーザーがどのようなキーワードの組みあわせで情報を求めているのかを知ることが重要です。

 まずは検索キーワードを推理することからはじまります。といっても、ユーザーが用いるキーワードの傾向がわかればいいわけで、便利なことに、それを教えてくれるウェブツールがあります。ヤフーは「キーワードアドバイスツール」、グーグルは「キーワードツール」というサービス名で提供しています。これらのツールを使うと、どのようなキーワードがどのような組みあわせで、どの程度の検索数があるのかという傾向はもちろん、月間検索数や検索連動型広告(リスティング広告)の推定平均クリック単価や、推定クリック率までわかります。

 例としてキーワード「シドニー」の場合の組みあわせをみていきましょう。図表1はキーワードアドバイスツールの画面です。今回はこの中の上から3番目にある「シドニー 観光」を例にあげながら話を進めます。



 検索キーワードの組みあわせ「シドニー 観光」は月間検索数が4400件あることがわかります。そしてリスティング広告の平均クリック単価は64円です。これは最高入札価格(つまり1位で表示させた場合)の1クリックあたりの平均クリック料金です。さらに右をみると「推定クリック率」があります。これは同じく1位表示をしていた場合のクリック率で、5.88%であることを示しています。その右隣は1日あたりのインプレッション数で、1日あたりの表示回数が102回あり、そして推定クリック数が6回ということを意味します。

 当然ながらこれだけでは集客としては不十分なので、その他のキーワードの組みあわせでも表示されるように組みあわせて原稿を作成することが必要となります。例えば第4位にある「シドニー 旅行」や第9位にある「シドニー ツアー」第12位にある「シドニー 情報」などは高クリック率が期待できます。


旅行会社のSEMのキーワード、実例解説

 ここで実際にキーワード「シドニー 観光」の検索結果から、旅行会社のSEMの実態を検証していきましょう。図表2がその画面です。検索で用いられた文字が太字で表示され、ユーザーが自ら用いたキーワードとどれが合致しているかが、把握しやすくなっています。SEMは限られた文字数のタイトルと説明文で表現しなければならないので、各社ともコピーライティングは知恵を絞っていることがうかがえます。いくつか実例をあげながら解説していきます。



 メイン部分の上から2番目にある広告では、タイトルを「シドニーの現地ツアーが安い!」として、さらに説明文では「損をするところでした」と表示しています。これは価格訴求型で、他の広告との差別化を測っています。

 同じく4番目にある広告ではタイトルで「格安オプショナルツアー予約!」として、本文では「シドニーの現地ツアー大セール中!価格を比べてください。」と掲載しています。同じく価格訴求型ですが、ユーザーの購買行動の特性である「比較購買」をうまく捉えた表現にしています。

 右サイドに目を向けると、トップにある広告の説明文で「24時間受付!」という文章で、従来の旅行会社の営業時間によるユーザー行動の制限を解き放ち、同時にクリックによる行動促進(Click to Action)を促しています。

 さらに右サイドの4番目の説明文では「最大70%!会員限定、さらにポイント付与でお得」として、付加価値を訴求しています。

 タイトルおよび説明文は、ユーザーにとって価値があるかどうか成否のカギを握ります。ユーザーにとっての価値とは、課題解決や満足度、付加価値などがあげられます。ぜひ自社の商品やサービスはユーザーにとってどのような価値があるかを考えてみたいところです。

 なお、ここで注意したいのは、これはヤフー検索の場合ということです。グーグルの「キーワードツール」画面だと(図表3)、キーワード「シドニー 観光」は月間2400件と、ヤフーに比べて約半分程度に留まっています。このあたりも留意が必要です。




航空会社も対象になるキーワード「航空券」

 今度は、旅行会社だけでなく、航空会社もかかわってくるキーワード「航空券」を重ねて調べてみましょう(図表4)。



 こちらも基本的には流れは同じで、異なったキーワードの組みあわせで検索されていることがわかります。「シドニー 航空券」のほかにも、「シドニー チケット」「シドニー 格安 航空券」「シドニー 直行便」などユーザーが用いるキーワードはバリエーションに富んでいます。同様に実例を検証しましょう(図表5)。



 まずメイン部分の1番上にある広告の説明文では「連休も年末年始も早めの予約がお得!」とあります。早期購買を促すと同時に、「年末年始」という文字列を表示することで、検討を先送りしているユーザーの需要の掘り起こしをはかっています。

 同じくメイン部分の2番目は、「シドニー往復47000円から!出発前日まで購入可能」とあります。数字の提示は具体性が高まり、ユーザーのアクションを促しやすくなります。また「前日」という文字列で間際予約も対応していることも表現して他社との差別化をはかっています。

 その下の3番目の広告の説明文には、「1分でできる簡単オンライン予約はココ!」という文章があります。予約プロセスにおける入力作業は煩雑な印象がありますが、「1分間でできる」という表現を加えることで簡単さを表現して、手続きに時間がかかるイメージを払拭しています。

 続けて右サイドにある広告に目を向けてみましょう。上から2番目には「格安航空券から正規航空券まで各航空会社の比較検討可。24時間予約。」とあります。上でも説明した通り、「比較購買」という購買行動の傾向があるので、そのニーズに答えた文章といえます。

 同じ右サイドの上から4番目の広告では、説明文に「日本各地16空港から直接出発できて、ソウルでもスムーズな乗り継ぎ」とあります。これは成田や関空以外からでも手軽に渡航できる点を訴求していることに加え、経由便の乗り継ぎにつきまといがちな煩わしいという印象の払拭を試みています。

 これだけ多彩なコピーライティングからもわかるように、検索エンジンマーケティング(SEM)の訴求ポイントは多様です。ぜひ高いクリック率をめざしましょう。


執筆:鶴本浩司(株式会社マーケティング・ボイス 代表取締役)

 外国政府観光局を経て、ツーリズム(観光・旅行)に特化し
たマーケティング会社、「株式会社マーケティング・ボイス」
を設立、現在に至る。

 その他、ツーリズム専門のシンクタンクであるツーリズム・
マーケティング研究所の客員研究員、東証上場企業・パイプド
ビッツ社の社外取締役なども兼職している。執筆、講演多数。