APEC観光相会合、「奈良宣言」採択−観光で経済成長めざし域内協力強化へ

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)の観光大臣会合は9月23日、観光振興での協力を継続、強化することなどを盛り込んだ「奈良宣言」を採択した。今回の会合のテーマは「アジア太平洋地域における新たな成長戦略としての観光」で、宣言でも観光がアジア太平洋地域の経済成長にとって重要な意味を持つと指摘。国土交通大臣の馬淵澄夫氏は、「(宣言で)成長戦略の中での観光産業の位置づけを明確に打ち出していくと確認されたことは一番大きい」と強調。その上で、観光大臣会合の開催についても「日本が観光産業を大々的に推進していくことを世界に向けて発信できた」と意義を語った。

 会合では、国際的な政治経済秩序が著しく変化する中でも、観光がアジア太平洋地域にとって重要な役割を果たし続けることを確認。宣言では、雇用創出や貧困の撲滅、環境保全などの点で、観光は域内の経済成長にとって重要であると指摘。そして、11月に予定されるAPEC首脳会議での宣言にも、観光の経済成長への貢献に関する言及を盛り込むことをめざすとした。

 また、観光の実務者レベルの会合である観光ワーキンググループ(TWG)で、2000年に採択されたAPEC観光憲章の実現に向けた観光戦略プランをとりまとめることも決定した。憲章では、観光ビジネスや投資の障壁を排除すること、移動人口や需要を拡大すること、持続的な観光マネジメントを実現すること、観光の意義や重要性について認知を向上することを目標にかかげている。戦略プランはこの憲章の再検討か具体化によって策定する方針で、2011年4月に開催予定のTWG会合までにとりまとめる予定だ。

 会合ではこのほか、観光指標の共通化など域内の協力強化についても話し合われた。宣言でも、観光振興や需要の平準化、ニューツーリズムの促進などに共同で取り組むことを盛り込んだ。また、新型インフルエンザなど旅行の阻害要因に対するリスクマネジメント策についても話し合われ、馬淵氏は「先駆的な取り組みをされている国・地域もあった。大変着目すべき点であったと思う」と感想を述べた。