ハワイ体験レポート:農園ツアーで食の魅力を体験
農園ツアーで食の魅力を体験
〜州で取り組む“ハワイ・ブランド”を見て、味わう〜
ハワイの農園を訪ねるファーム(農園)ツアー。一般的に知られるまでになってはいないが、一部の農園では視察ツアーや旅行者を受け入れており、ハワイの新しい素材として注目に値する。先日、オアフ島東部、ワイマナロに位置するナロファームを訪問。ワイキキとは異なる気候や景観、新鮮な野菜やハーブに触れ、ハワイの新たな一面を垣間見た。2006年にハワイ州農務局がはじめたプログラム「シールズ・オブ・クオリティ」の取り組みとあわせ、ハワイの食事情の一端をレポートする。
元横綱・曙の故郷ワイマナロの農園へ
カラリと晴れたワイキキを後に、車で72号線を東へ走る。ダイヤモンドヘッドを回り込むと、美しい海の背後には切り立つ渓谷がそびえ、辺りにうっそうとした緑が増えてくる。ハワイアンのドライバーが「この辺は湿気があるよ」といっていた通り、ワイマナロで車を降りるとむっとした暑さに身体を包まれた。
今回訪問するナロファームは元横綱、曙の故郷であるワイマナロに位置している。ここはウインドワードと呼ばれる地区で、北東から吹く貿易風に侵食されたコオラウ山脈の渓谷と緑が印象的な土地だ。
湿気があり、肥沃な土壌に恵まれたこの土地は、農業に向いている。日系のチャールズ・オキモト氏がこの地に農園を切り開いたのは1953年。当時はパパイヤやグアバなどのフルーツ、大根や長ネギなどを育てていたが、ハワイ大学で農業を専攻した息子のディーン・オキモト氏が跡を継いで方向転換した。レストラン「ロイズ」のオーナーシェフ、ロイ・ヤマグチ氏の助言を受け、ベイビー・グリーンと呼ばれる新鮮な野菜をつくることにしたのだ。その後、レッドマスタードやベイビーロメイン、ケール、チャービルなど、レタスやグリーンをバランスよくミックスした栄養満点の「ナログリーンズ」をブランドとして確立。今では約130ものレストランで使用されている。
ワイマナロの町を少々迷いながら、ナロファームに到着。旅行者を受け入れているとはいえ、特に観光用の施設や設備はなく、車を降りるとその足元に畑が広がっている。同農園のマーケティングを担当するフレッドさんと農園ツアーを担当するレスリーさんの案内により、まずはいくつかのハーブを試食。少し苦いタイバジル、香りのいいシソ(オポ)など、10種類くらいを手に取ったり、口にしてみたり。ふと顔を上げると、畑の向こうにはコウラウ山脈の迫力ある風景が迫り、なんともいえず圧巻だ。今いる場所がハワイであることを忘れてしまいそうな、見慣れないハワイがそこにあった。
生産地とレストランをセットに
ナロファーム産の野菜は、無農薬で育てられているのが特徴だ。ハーブのほかにも、レタスやキュウリ、トマト、ジャガイモ、ナス、ニラなどを育てており、今や敷地は全13エーカー(約5.3ヘクタール)にも及ぶ。また、約1億円をかけて加工工場も整備した。収穫した新鮮な野菜やハーブを大量に洗い、パッケージするためだ。この工場があるおかげで、新鮮なハワイ産グリーンがその日のうちに出荷できる仕組みになっている。
工場見学の後は、実際にナログリーンズを味わってみるのだが、今回はスケジュールの都合上、時間が足りず、テイクアウトさせてもらった。いろいろなグリーンリーフを混ぜたサラダは見た目にもフレッシュ。バスの中であっという間に完食してしまい、やはり鮮度は味覚を大いに左右すると実感した。
ハワイ州農務局では、ナロファームのような農園で、今後ツアーグループなどを受け入れる体制を整えていく意向。現在は企業の視察ツアーなどの対応にとどまっているが、旅行者を受け入れていくなら、ある程度の設備やツアー催行上の工夫が必要だろう。ナロファームに限らず、まずは土地や農作物の特徴を日本語で解説できるガイドの育成が求められる。
現地のオプショナルツアーにいくつか例があるが、農園訪問とレストランでの食事を組みあわせたり、他の農園や植物園などの観光スポットを周遊するといった工夫も考えられる。農園で食材に触れ、レストランで味わう、そんな農園ツアーがより一般的に広まれば、旅行者に新しいハワイの魅力を示すことができるはずだ。
ハワイ・ブランドの確立へ
太平洋の大海原に囲まれたハワイは、多くの食材を海外からの輸入に頼らざるをえない。しかし、ハワイ・リージョナル・クイジーンの台頭でハワイの食のクオリティが高まると、食材に対するクオリティも求められるようになってきた。そこで、ハワイ州農務局は2006年5月から、シールズ・オブ・クオリティ(SOQ)を発足。これは、メイド・イン・ハワイの農産物をハワイ州が品質保証するプログラムで、“ハワイ・ブランド”を推進するための制度だ。条件は、ハワイ生まれ・ハワイ育ちであることに加え、加工農産物の生産工程の51%以上をハワイ州内で行なっていること、ハワイ州と貿易協会の定めた輸出基準に達した品質であること。ハワイ州農務局の審査をパスした食品にはSOQシールが貼られるので、消費者はこれで判断することができる。
そもそもハワイの食材の質を求める動きは、ハワイ・リージョナル・クイジーンの著名なシェフたちが「ハワイ産の新鮮な食材で美味しい料理をつくりたい」と素材を探し求め、メニューに取り入れたことからはじまっている。そしてアラン・ウォンズ、ロイズ、シェフ・マブロといったハワイの一流レストランがSOQの食材を使用しはじめたことで知名度が高まり、レストランやスーパー、ファーマーズ・マーケットなどで見かける身近な食材になっていった。
またSOQのメリットは、新鮮な食材が食ベられることだけではない。メイド・イン・ハワイの農産物を守り、推進することで、生産者へ利益を生み出し、地産地消によるハワイ経済の発展も目的としている。さらには、ハワイのエコシステムを守ることにもつながっているのだ。
なお、SOQプログラムには現在46社が登録しており、ナロファームもそのひとつ。野菜やフルーツだけでなく、食肉やシーフード、トロピカルフラワー、コーヒー、キャンディ、アイスクリーム、蜂蜜、ジャムといった生産物や加工品の会社がメンバーとなっており、旅行中にもスーパーやみやげ物店などでSOQのシールが貼られた商品を手にする機会があるだろう。ハワイらしさに触れられるプロダクトとして旅行者に案内したり、旅行企画に組み込んだり、特典として利用するなど、積極的に活用していきたい。
〜州で取り組む“ハワイ・ブランド”を見て、味わう〜
ハワイの農園を訪ねるファーム(農園)ツアー。一般的に知られるまでになってはいないが、一部の農園では視察ツアーや旅行者を受け入れており、ハワイの新しい素材として注目に値する。先日、オアフ島東部、ワイマナロに位置するナロファームを訪問。ワイキキとは異なる気候や景観、新鮮な野菜やハーブに触れ、ハワイの新たな一面を垣間見た。2006年にハワイ州農務局がはじめたプログラム「シールズ・オブ・クオリティ」の取り組みとあわせ、ハワイの食事情の一端をレポートする。
元横綱・曙の故郷ワイマナロの農園へ
カラリと晴れたワイキキを後に、車で72号線を東へ走る。ダイヤモンドヘッドを回り込むと、美しい海の背後には切り立つ渓谷がそびえ、辺りにうっそうとした緑が増えてくる。ハワイアンのドライバーが「この辺は湿気があるよ」といっていた通り、ワイマナロで車を降りるとむっとした暑さに身体を包まれた。
今回訪問するナロファームは元横綱、曙の故郷であるワイマナロに位置している。ここはウインドワードと呼ばれる地区で、北東から吹く貿易風に侵食されたコオラウ山脈の渓谷と緑が印象的な土地だ。
湿気があり、肥沃な土壌に恵まれたこの土地は、農業に向いている。日系のチャールズ・オキモト氏がこの地に農園を切り開いたのは1953年。当時はパパイヤやグアバなどのフルーツ、大根や長ネギなどを育てていたが、ハワイ大学で農業を専攻した息子のディーン・オキモト氏が跡を継いで方向転換した。レストラン「ロイズ」のオーナーシェフ、ロイ・ヤマグチ氏の助言を受け、ベイビー・グリーンと呼ばれる新鮮な野菜をつくることにしたのだ。その後、レッドマスタードやベイビーロメイン、ケール、チャービルなど、レタスやグリーンをバランスよくミックスした栄養満点の「ナログリーンズ」をブランドとして確立。今では約130ものレストランで使用されている。
ワイマナロの町を少々迷いながら、ナロファームに到着。旅行者を受け入れているとはいえ、特に観光用の施設や設備はなく、車を降りるとその足元に畑が広がっている。同農園のマーケティングを担当するフレッドさんと農園ツアーを担当するレスリーさんの案内により、まずはいくつかのハーブを試食。少し苦いタイバジル、香りのいいシソ(オポ)など、10種類くらいを手に取ったり、口にしてみたり。ふと顔を上げると、畑の向こうにはコウラウ山脈の迫力ある風景が迫り、なんともいえず圧巻だ。今いる場所がハワイであることを忘れてしまいそうな、見慣れないハワイがそこにあった。
生産地とレストランをセットに
ナロファーム産の野菜は、無農薬で育てられているのが特徴だ。ハーブのほかにも、レタスやキュウリ、トマト、ジャガイモ、ナス、ニラなどを育てており、今や敷地は全13エーカー(約5.3ヘクタール)にも及ぶ。また、約1億円をかけて加工工場も整備した。収穫した新鮮な野菜やハーブを大量に洗い、パッケージするためだ。この工場があるおかげで、新鮮なハワイ産グリーンがその日のうちに出荷できる仕組みになっている。
工場見学の後は、実際にナログリーンズを味わってみるのだが、今回はスケジュールの都合上、時間が足りず、テイクアウトさせてもらった。いろいろなグリーンリーフを混ぜたサラダは見た目にもフレッシュ。バスの中であっという間に完食してしまい、やはり鮮度は味覚を大いに左右すると実感した。
ハワイ州農務局では、ナロファームのような農園で、今後ツアーグループなどを受け入れる体制を整えていく意向。現在は企業の視察ツアーなどの対応にとどまっているが、旅行者を受け入れていくなら、ある程度の設備やツアー催行上の工夫が必要だろう。ナロファームに限らず、まずは土地や農作物の特徴を日本語で解説できるガイドの育成が求められる。
現地のオプショナルツアーにいくつか例があるが、農園訪問とレストランでの食事を組みあわせたり、他の農園や植物園などの観光スポットを周遊するといった工夫も考えられる。農園で食材に触れ、レストランで味わう、そんな農園ツアーがより一般的に広まれば、旅行者に新しいハワイの魅力を示すことができるはずだ。
ハワイ・ブランドの確立へ
太平洋の大海原に囲まれたハワイは、多くの食材を海外からの輸入に頼らざるをえない。しかし、ハワイ・リージョナル・クイジーンの台頭でハワイの食のクオリティが高まると、食材に対するクオリティも求められるようになってきた。そこで、ハワイ州農務局は2006年5月から、シールズ・オブ・クオリティ(SOQ)を発足。これは、メイド・イン・ハワイの農産物をハワイ州が品質保証するプログラムで、“ハワイ・ブランド”を推進するための制度だ。条件は、ハワイ生まれ・ハワイ育ちであることに加え、加工農産物の生産工程の51%以上をハワイ州内で行なっていること、ハワイ州と貿易協会の定めた輸出基準に達した品質であること。ハワイ州農務局の審査をパスした食品にはSOQシールが貼られるので、消費者はこれで判断することができる。
そもそもハワイの食材の質を求める動きは、ハワイ・リージョナル・クイジーンの著名なシェフたちが「ハワイ産の新鮮な食材で美味しい料理をつくりたい」と素材を探し求め、メニューに取り入れたことからはじまっている。そしてアラン・ウォンズ、ロイズ、シェフ・マブロといったハワイの一流レストランがSOQの食材を使用しはじめたことで知名度が高まり、レストランやスーパー、ファーマーズ・マーケットなどで見かける身近な食材になっていった。
またSOQのメリットは、新鮮な食材が食ベられることだけではない。メイド・イン・ハワイの農産物を守り、推進することで、生産者へ利益を生み出し、地産地消によるハワイ経済の発展も目的としている。さらには、ハワイのエコシステムを守ることにもつながっているのだ。
なお、SOQプログラムには現在46社が登録しており、ナロファームもそのひとつ。野菜やフルーツだけでなく、食肉やシーフード、トロピカルフラワー、コーヒー、キャンディ、アイスクリーム、蜂蜜、ジャムといった生産物や加工品の会社がメンバーとなっており、旅行中にもスーパーやみやげ物店などでSOQのシールが貼られた商品を手にする機会があるだろう。ハワイらしさに触れられるプロダクトとして旅行者に案内したり、旅行企画に組み込んだり、特典として利用するなど、積極的に活用していきたい。
ハレクラニ「オーキッズ」で極上ディナー
確かな素材を一流の味付けで
ハワイの食のレベルは、10数年前に比べると格段に向上
している。今回はハレクラニの「オーキッズ」で感動の味
に出会った。
ビーチサイドに位置するエレガントなレストラン「オー
キッズ」は、シーフードの創作料理が得意というだけあっ
て、オナガ鯛“オーキッズ・スタイル”が絶品だ。蒸した
鯛にシイタケとネギをあしらい、ゴマ油としょう油で味付
けしたシンプルなメニューなのだが、アジア風の味付けと
風味に軽い衝撃を覚えたほど。ホテル内で焼いているとい
うブレッドやハレクラニ特製ココナッツケーキといったサ
イドメニューにもぬかりがなく、まさに唸るほど美味なデ
ィナーを堪能した。
同ホテルでもハワイ産の食材へのこだわりは強い。カジュアルダイニングの「ハウス・
ウィズアウト・ア・キー」には、ナロファームのグリーンにハウウラ産トマト、ビッグアイ
ランド産ゴートチーズを使った「ナロ・グリーン・サラダ」がラインナップされている。
「採りたての新鮮な食材に勝るものはない」というシェフのこだわりもあり、昔から地
元産の旬の食材を利用してきたという。ナロファームの訪問とハレクラニのディナーは
偶然同じ日にスケジュールされたものだが、ハワイの地産地消を見て体験する絶好の機
会となった。
今週のハワイ50選
ワイキキ(オアフ島)
取材協力:ハワイ州観光局(HTJ)、チャイナエアライン(CI)
取材:竹内加恵