取材ノート:市場拡大の鍵はカジュアルクルーズ−販売に向け魅力の再認識を

欧米と日本で異なるクルーズのイメージ

日本と世界のクルーズ市場と比較すると、顧客の年齢層に開きがあるのも特徴だ。欧米では40代から利用されているが、日本では50代後半以上、60代から70代がメインの客層。西口氏は、「熟年層は飛行機より気軽なので船を選び、乗ってみたら楽しいのでリピーターとなる。今後はいかに若い世代を取り込むかが課題」と述べる。
カジュアルクルーズは過去8年間で、ドイツで220%増、イタリアで173%増など、EU諸国で高い伸びを示し、北米ではカナダで137%増となった。一方、日本では、同時期に12%減少。祖師氏は、「クルーズは高級、窮屈、長期といった誤解がある。欧米で主流のカジュアルクルーズがまだ認知されていない」と語る。
販売ポイントは説明力、社員が知識を備えて

西口氏も「クルーズの魅力はパンフレットだけでは伝えきれない」と、販売員による説明を重視。祖師氏は「ラグジュアリー商品とカジュアル商品、それぞれの良さを販売員が理解し、顧客が求めるイメージとのミスマッチを防ぐことが大切」と強調した。「クルーズは説得商品。顧客への説明会は不可欠」という岡本氏によると、クラブツーリズムではコース別の説明会を随時実施するほか、年2回、1日約500名が参加する大説明会を開催。「クルーズ・コンサルタントが実際に乗ったときの体験談を交えて、各ランクの良さを具体的に話すことがポイント」だという。
堀内氏は、「フライ&クルーズなどはトータルの価格だと高く見られるかもしれないが、そこにはエンターテイメント、食事、万が一の時の医療費など、基本がすべて含まれている。なぜこの価格なのか、販売員の口から付加価値をもっと伝えてほしい」と語った。
日本市場にあうクルーズ商品とは

外国船か日本船かの選択肢については、西口氏が「日本船は割高になるが、日本式のおもてなしを受けられる。外国船は言葉の違いがあるが、スタッフは陽気で楽しい」と各長所を示し、岡本氏は「顧客の好みは千差万別。多様な選択肢として両方を案内」と続ける。祖師氏は、「高齢者には日本船が好まれる。ポイントはセグメント分け」と指摘。岡本氏によるとクルーズの8割はリピーターであるため、クラブツーリズムでは参加時期、コースなどを細かくデータベースにし、セグメント分けした世帯に専用カタログを発行しているという。
また、価格設定は、欧米では予約状況による変動相場制が一般的だが、糸川氏は「日本ではカジュアルクルーズ市場が未成熟であり、価格競争に陥ってしまう懸念から、円建ての固定料金を設定した」と述べる。荒木氏も「旅行業界でこれ以上の価格競争は限界。新規の旅行会社に取り扱ってもらうためには、旅行会社の収益になるだけの価格をキープする必要がある」と言及した。
高い可能性の兆し、マスコミ露出も鍵

2010年5月にはロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)の「レジェンド・オブ・ザ・シーズ」による横浜発着クルーズ(9日間、9万8000円)が2本、運航される。祖師氏は「クルーズ認知にはマスコミでの露出が効果的」とし、この好機に注目を集めることを期待。さらに、「海外の船が日本に来ることは、ツーウェイツーリズムにもなり得る」とも語る。同クルーズは発売後1ヶ月で完売しており、「日本のカジュアルクルーズ市場の夜明け」と期待を寄せている。
取材:福田晴子