Marriott Bonvoy

より旅行者に優しいアメリカへ−パウワウ、日本のインフル反応に苦言も

 (マイアミ発:宮田麻未)5月16日にマイアミで「インターナショナルPOW WOW2009」が開催、18日から見本市と商談会が始まった。オープニング・ランチの基調演説で、主催者のUSトラベル・アソシエーションプレジデント兼CEOのロジャー・ダウ氏は、「今年は外国からの訪問客にとって、アメリカがより開かれた“ビジター・フレンドリー”な国になるチャンス」と訴え、観光産業の重要性を明確に認識しているオバマ大統領のもとで、旅行業界にとって新たな可能性が広がる年との認識を表明した。

 2009年3月には、ダウ氏を始めとする米国観光業界の重鎮13名とオバマ大統領との直接会見が実現。旅行業界の声を直接大統領に伝える機会は初めてで、議会や行政に対する旅行業界からの働きかけを本格化する大きな一歩と考えられる。旅行業界としては、外国からの旅行者がアメリカへ入国する際のプロセスをより迅速に、しかもホスピタリティを感じさせるものにすることの重要性を訴えた。これに応え、アメリカ政府は入国管理に関するいくつかの試みをおこなっている。入国検査のプロセスをわかりやすく説明したビデオの制作をディズニーに依頼するなど、カスタマーサービス向上のために連邦政府が始めた「入国地点モデル・プログラム(The Ports of Entry program)」の推移を、アメリカの旅行業界は好意的に受け止めていることがうかがわれた。


▽新型インフルエンザへの危機管理

 同じく基調演説の中では新型インフルエンザについても言及、その口調は日本との“温度差”を強く感じさせるものだった。ダウ氏は「発生が表面化してからすぐ対策委員会が開かれたが、『慎重に対応するべきだが、パニックになる必要はない』という結論に達した」と述べた。開催前に主催者から配布された文書の中でも、「旅行の取りやめなどの過剰な反応は不必要であるばかりでなく、経済的にも、社会的な影響でもマイナス面が大きい」と指摘されており、参加者にも危機感はほとんど感じられなかった。マスク姿は全く見られず、メキシコやカナダからの参加者も例年通りとのことだった。

これに対し、開催直前になって日本からの参加者からキャンセルが相次いだことはかなり目立ち、重く受け止められているようだ。急なキャンセルでアポイントの調整がつかず、“ノーショー”と同じような状況になってしまったセラーからは疑問の声も上がっている。ダイヤモンド・ビック社の西川敏晴会長はパウワウの主催者側などから、日本の旅行会社やメディア、例年訪れる人が参加していないことについてどう思うかという質問を受けたことを紹介し、「残念ながら、相手の方々を説得するのはとてもむずかしく、理解を得られる説明もし難かった」と話した。さらに西川氏は日米の状況判断の違いは、文化的な背景の違いはもちろん、日本型の危機管理の現状を象徴するものではないかととらえ、「日本型の危機管理のやり方がこのままで良いとは思えない」と述べた。

 ある日本の旅行会社では、「カナダやアメリカの現地法人との認識の違いが、同じ社内でも問題となり、キャンセル料の発生やその処理方法などをめぐり調整が難しくなっている」という声もあるとのことだ。SARSなどの場合は、他の国からもキャンセルが発生し、ホテルを説得するのも比較的容易にできたが、今回の場合、日本の動きだけが際だっており、対応の難しさが出ているものと思われる。
 

▽今こそ“アメリカの旅への誘い”のチャンス!

 オープニング・ランチの最後に壇上に上がった、インターナショナルPOWWOW2009議長のエリック・ダンジンガー氏(ウィンダム・ホテル・グループ社長兼CEO)は、ケネディ大統領やマーティン・ルーサ・キング師、マーク・トゥエインなどの有名人の言葉を引き、旅が世界の人々の相互理解を助けると強調。旅行業界に身を置く全ての人々が努力をすることによって、人々の旅への思いを深め、より素晴らしい体験をしてもらうことができると述べ、会場からは大きな拍手が挙がっていた。(写真:神尾明朗)


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