注目の世界遺産暫定リスト(2)ホワイトサンズ国立モニュメント アメリカ

  • 2009年2月24日
 見渡す限り360度の真っ白な世界。でもそこは雪原ではない。夏季の日中、40度近くになる灼熱の砂漠だ。世界を見れば美しい砂漠はいろいろなところにあるが、内陸部で純白の砂でできた砂漠が見られるのはかなり珍しい。それが、アメリカ西部、ニューメキシコ州にあるホワイトサンズだ。

 メキシコとの国境にも近いニューメキシコ州南部。冬は氷点下、夏は40度にもなる乾燥した土地にホワイトサンズ国立モニュメントがある。名前は「モニュメント」だが、国立公園と同じ扱いだ。白砂の砂漠や砂浜はいくつかある。日本にも「白砂」を謳う砂浜が多数あるが、実際の色は黄色がかっていたり、クリーム色だったりで、真っ白ではない。ところがここに広がる砂漠の砂は本当に「純白」なのだ。

 この純白の砂の正体は石膏。水によく溶ける物質のために、普通は雨が降れば水に溶けて流されていってしまうのだが、ホワイトサンズは盆地にあるため、周辺には流れ出る川がない。周囲の山に降った雨は地面の石膏を溶かしながら、砂漠の南西にあるルセロ湖に注ぎ込む。砂漠にあるルセロ湖は強い日差しのために一部が干上がってしまうことがあり、そうなると水が蒸発した湖底には大量の石膏が残される。そして強い南西風が吹くと、この白い砂が飛ばされ、砂丘となって堆積していくのだ。

 ゲートウェイとなる最寄りの都市はメキシコとの国境の町であるテキサス州のエルパソ。ここから約2時間のドライブで到着する。エルパソ発の現地ツアーもあるが、時間が自由に使えるレンタカーでの旅行をすすめたい。ホワイトサンズから4時間のところには、世界遺産に指定されているカールズバッド洞窟国立公園や、以前この特集で取り上げたUFOの町ロズウェルなどもあり、ドライブを楽しむのにいいエリアだ。


 さて、ホワイトサンズ国立モニュメントでの楽しみは、公園内を走る片道約13キロメートルのデューンドライブを走り、途中何ヶ所かにある駐車場に車を停めて、白い砂のなかに作られたトレイルを歩いてみることだ。



 美しい風紋が刻まれた砂丘、厳しい自然環境の下でたくましく生きる植物たち、手ですくってみるとさらさらこぼれ落ちる真っ白な砂。真っ白な平原と青い空だけが視界に広がる風景を眺めていると、自分が別の惑星を訪れているような気持ちになる。夕方、日が傾いて白い砂漠がオレンジ色に変わっていく時間帯もまたすばらしい。まさに地球のスケールを感じる見どころである。

 歩いたり、景色を楽しんだりするだけでなく、ソリや段ボールの切れ端をお尻に敷いて砂丘滑りを楽しんでいる人も多い。デューンドライブの入口にあるビジターセンターからは、夏の間、無料のレンジャープログラムが実施されているほか、満月の夜に砂丘を歩くというロマンチックなツアーもある。

 ホワイトサンズ国立モニュメントは2008年に世界遺産暫定リストに登録された。実はアメリカは1973年、世界で最初に「世界遺産条約」を批准した国であり、1978年に世界で最初に登録された12の世界遺産のうち、2つがアメリカのもの。それらがイエローストーン国立公園(自然遺産)とメサ・ベルデ(文化遺産)である。世界遺産とのかかわりが強い国であることも覚えておきたい。


▽関連記事
注目の世界遺産暫定リスト(1)中国南西部のミャオ族村、程陽の風雨橋(2009/02/23)