現地レポート:韓国
済州島旅行の新たな切り口「食と健康」
ソウルとの違いを意識したプロモーションがポイントに
〜主要客のミドルエイジ女性と若者カップルをひきつける新要素〜
済州島特別自治道と済州島特別自治道観光協会は、日本市場に向けて済州島の情報発信の強化に取り組んだ。ここ5年の日本人観光客訪問数の推移を見ると、SARSや鳥インフルエンザに悩まされた2003年こそ10万1808人と減少したものの、2004年には14万351人と盛り返し、2006年は18万3168人と伸びを見せていた。しかし、2007年は18万3240人と微増に留まり、2008年は数パーセントのマイナス成長となる見込みだ。そこで済州島では巻き返しをめざし、済州島の魅力を「食と健康」と特徴づけ、プロモーションを展開している。その一環として開催されたプレスツアーでは、参加した各メディアから新たな可能性が指摘された。
韓流ファンの中年女性に新たなきざし
済州島特別自治道観光政策課課長の梁景好氏によると、現在、済州島の最大の観光素材となっているのは、韓国ドラマのロケ地や撮影セット。日本から出発するツアーの50パーセント以上が、旅程にドラマのロケ地や撮影セットの見学を組み込んでいるという。こういったツアーの参加者は、圧倒的にミドルエイジの女性が多い。現地では、ペ・ヨンジュン主演で日本でも高視聴率をマークした人気ドラマ「太王四神記」のロケセットをそのまま残したパークサザンランドはもちろん、イ・ビョンホン主演のドラマ「オールイン」が撮影されたロッテホテル済州でも、同年代の女性グループが目立った。
今回のプレスツアーに参加したのは、テレビ、雑誌、新聞、ウェブなど20名。韓国のエンターテイメント情報を発信する雑誌や、韓流スター専門チャンネルのテレビといった、韓国の情報に特化したメディアが中心だ。これらのメディアの視聴者や読者は、まさに前出のミドルエイジ女性。各メディアにおいても、人気ドラマを追体験できる撮影セットやロケ地を案内したり、あこがれのスターが食事をしたレストランを紹介する企画は、手堅くヒットしていた。しかし、ここ最近、その流れが変わってきたという。ミドルエイジ女性向け韓国エンターテイメント誌の担当者は「以前はスター情報そのものが読者に喜ばれていたが、今では韓国そのものに興味を持つ読者が増えてきた」と話す。韓流スターをきっかけに「彼は何を食べて、どんなところで暮らしているの」と、韓国人の気質や考え方、歴史、食や住環境、言語などに興味を持ち、それらを体験することにも積極的のようだ。同じような意見は、ラジオ担当やウェブ担当からもあがった。
韓国に興味を持った人に「食と健康」で新たな魅力を
韓国の素顔に触れるには、最先端で都会的なソウルより、古い時代の雰囲気が今も残る済州島が適している。言葉ひとつとっても、ソウルでは英語が通じることが多いが、済州島ではあまり通じない。かわりに街の人々は、つたないハングル語を一生懸命聞き取ってくれる。韓国語を習いはじめたミドルエイジ女性なら、短期ホームステイも楽しいだろう。レストランの食事も伝統的な家庭料理が多く、済州島特産のアワビやウニ、太刀魚といった海産物は日本でもおなじみの食材だが、調理や味付けは韓国流。豚肉も名物で、済州黒豚の三枚肉は韓流スターにも人気の料理だ。このほか、水がきれいな済州島には、超軟水として名高い「三多水」もある。「韓国料理は美容と健康に良いと、日本人女性に大人気。現地で学べる料理教室などがあれば」と、女性向け韓国ライフスタイル誌の担当者は話す。
また、日本人のミドルエイジ女性といえば「健康」が最大の関心事といっても過言ではない。済州島では2008年、日韓観光交流年のイベントとして、トレッキング大会や世界自然遺産ウォーキング大会を開催。これらのイベントは、今後も毎年継続して行われる予定だ。また、海岸沿いに整備された遊歩道など、自然を満喫できるポイントも多い。「ウォーキングやトレッキングは、まさにミドルエイジがターゲット。韓流スター好きな女性とその夫と、夫婦にマーケットを広げていける」と喜ぶ声があがった。
たとえば、韓国の伝統料理を学ぶ料理教室と、自然遺産の中でのウォーキング、市場で食材のショッピングなどを組み合わせれば、韓流スターに頼らなくても、ミドルエイジの女性を惹きつけられそうだ。「ロケ地めぐりで済州島を訪れるのは1度だけ。けれども付加価値があれば、韓国に興味を持ったミドルエイジの女性は、リピーターになると思う」と話す参加者もいた。
男も女も楽しめる、韓流ビューティーとアクティビティ
参加した各メディアからは「済州島の本当の魅力は、実際に来るまでわからなかった」という声が多くあがった。「韓流ファンのミドルエイジ女性のための観光地だと思っていたけれど、むしろ若いカップルにぴったり」と話すのは、記事広告作成のために参加した新聞記者。タレントのユン・ソナやヘアメイクのIKKOの影響もあり、若い女性を中心にコリアン・ビューティへの注目度が高まっている。そんな若い女性に向いているのが、韓国のお茶文化をお洒落にアレンジした「オソルロックミュージアム」だ。日本でも緑茶に含まれるカテキンやビタミンは美容と健康に良いと知られているが、韓国でも同じ。韓国の大手コスメメーカーが手がける同施設は広大な茶畑を見渡す高台に建ち、韓国に古くから伝わるお茶をカラフルなティーバッグにしたり、ローションやパックなどコスメに取り入れたりしている。併設のティーハウスではスムージーやラテ、ケーキ、ソフトクリームなど、今風にアレンジしたお茶スイーツが提供され、若い女性でにぎわっていた。
また、ツアーに参加した若い男性が喜んだのは、本物の銃を撃つことができる射撃場だ。初めての体験に、時間を忘れて的に集中している男性もいた。クレイ射撃場では散弾銃も体験できる。このほか、済州島では外国人はカジノを利用でき、こちらも男性の人気が高かった。参加者からは「若い世代は、海外旅行には行かないけれど、国内を中心に近くて手軽な旅行はしている。済州島は沖縄のような位置づけで捉えたほうがいい」とか「観光地や飲食店は、どこもトイレがきれいで衛生的。若い女性でも安心して旅行ができる」などの感想も聞かれた。
「食と健康」がメインのプレスツアーではあったが、参加者全員が口を揃えたのが「済州島のポテンシャルの高さ」。「料理とエステだけでは、ソウルではなく済州島を選ばせるのは難しい」との意見があり、たとえば同じ2泊3日の日程でもソウルがショッピングとエステの弾丸ツアーだとしたら、済州島はゆったりとした時間を楽しむウィークエンド・リゾートとしての打ち出しをすすめる。自然とふれあい、ほっこり和みに行くといった位置づけだ。整備された観光地、清潔なホテルやレストラン、日本人にもなじみのある郷土料理、ミドルエイジも若い世代も楽しめる豊富なアクティビティ。これらの魅力を「ソウルとどう違うのか」といった視点を踏まえてプロモーションしていくのが、今後の新たな展開につながりそうだ。
ソウルとの違いを意識したプロモーションがポイントに
〜主要客のミドルエイジ女性と若者カップルをひきつける新要素〜
済州島特別自治道と済州島特別自治道観光協会は、日本市場に向けて済州島の情報発信の強化に取り組んだ。ここ5年の日本人観光客訪問数の推移を見ると、SARSや鳥インフルエンザに悩まされた2003年こそ10万1808人と減少したものの、2004年には14万351人と盛り返し、2006年は18万3168人と伸びを見せていた。しかし、2007年は18万3240人と微増に留まり、2008年は数パーセントのマイナス成長となる見込みだ。そこで済州島では巻き返しをめざし、済州島の魅力を「食と健康」と特徴づけ、プロモーションを展開している。その一環として開催されたプレスツアーでは、参加した各メディアから新たな可能性が指摘された。
韓流ファンの中年女性に新たなきざし
済州島特別自治道観光政策課課長の梁景好氏によると、現在、済州島の最大の観光素材となっているのは、韓国ドラマのロケ地や撮影セット。日本から出発するツアーの50パーセント以上が、旅程にドラマのロケ地や撮影セットの見学を組み込んでいるという。こういったツアーの参加者は、圧倒的にミドルエイジの女性が多い。現地では、ペ・ヨンジュン主演で日本でも高視聴率をマークした人気ドラマ「太王四神記」のロケセットをそのまま残したパークサザンランドはもちろん、イ・ビョンホン主演のドラマ「オールイン」が撮影されたロッテホテル済州でも、同年代の女性グループが目立った。
今回のプレスツアーに参加したのは、テレビ、雑誌、新聞、ウェブなど20名。韓国のエンターテイメント情報を発信する雑誌や、韓流スター専門チャンネルのテレビといった、韓国の情報に特化したメディアが中心だ。これらのメディアの視聴者や読者は、まさに前出のミドルエイジ女性。各メディアにおいても、人気ドラマを追体験できる撮影セットやロケ地を案内したり、あこがれのスターが食事をしたレストランを紹介する企画は、手堅くヒットしていた。しかし、ここ最近、その流れが変わってきたという。ミドルエイジ女性向け韓国エンターテイメント誌の担当者は「以前はスター情報そのものが読者に喜ばれていたが、今では韓国そのものに興味を持つ読者が増えてきた」と話す。韓流スターをきっかけに「彼は何を食べて、どんなところで暮らしているの」と、韓国人の気質や考え方、歴史、食や住環境、言語などに興味を持ち、それらを体験することにも積極的のようだ。同じような意見は、ラジオ担当やウェブ担当からもあがった。
韓国に興味を持った人に「食と健康」で新たな魅力を
韓国の素顔に触れるには、最先端で都会的なソウルより、古い時代の雰囲気が今も残る済州島が適している。言葉ひとつとっても、ソウルでは英語が通じることが多いが、済州島ではあまり通じない。かわりに街の人々は、つたないハングル語を一生懸命聞き取ってくれる。韓国語を習いはじめたミドルエイジ女性なら、短期ホームステイも楽しいだろう。レストランの食事も伝統的な家庭料理が多く、済州島特産のアワビやウニ、太刀魚といった海産物は日本でもおなじみの食材だが、調理や味付けは韓国流。豚肉も名物で、済州黒豚の三枚肉は韓流スターにも人気の料理だ。このほか、水がきれいな済州島には、超軟水として名高い「三多水」もある。「韓国料理は美容と健康に良いと、日本人女性に大人気。現地で学べる料理教室などがあれば」と、女性向け韓国ライフスタイル誌の担当者は話す。
また、日本人のミドルエイジ女性といえば「健康」が最大の関心事といっても過言ではない。済州島では2008年、日韓観光交流年のイベントとして、トレッキング大会や世界自然遺産ウォーキング大会を開催。これらのイベントは、今後も毎年継続して行われる予定だ。また、海岸沿いに整備された遊歩道など、自然を満喫できるポイントも多い。「ウォーキングやトレッキングは、まさにミドルエイジがターゲット。韓流スター好きな女性とその夫と、夫婦にマーケットを広げていける」と喜ぶ声があがった。
たとえば、韓国の伝統料理を学ぶ料理教室と、自然遺産の中でのウォーキング、市場で食材のショッピングなどを組み合わせれば、韓流スターに頼らなくても、ミドルエイジの女性を惹きつけられそうだ。「ロケ地めぐりで済州島を訪れるのは1度だけ。けれども付加価値があれば、韓国に興味を持ったミドルエイジの女性は、リピーターになると思う」と話す参加者もいた。
男も女も楽しめる、韓流ビューティーとアクティビティ
参加した各メディアからは「済州島の本当の魅力は、実際に来るまでわからなかった」という声が多くあがった。「韓流ファンのミドルエイジ女性のための観光地だと思っていたけれど、むしろ若いカップルにぴったり」と話すのは、記事広告作成のために参加した新聞記者。タレントのユン・ソナやヘアメイクのIKKOの影響もあり、若い女性を中心にコリアン・ビューティへの注目度が高まっている。そんな若い女性に向いているのが、韓国のお茶文化をお洒落にアレンジした「オソルロックミュージアム」だ。日本でも緑茶に含まれるカテキンやビタミンは美容と健康に良いと知られているが、韓国でも同じ。韓国の大手コスメメーカーが手がける同施設は広大な茶畑を見渡す高台に建ち、韓国に古くから伝わるお茶をカラフルなティーバッグにしたり、ローションやパックなどコスメに取り入れたりしている。併設のティーハウスではスムージーやラテ、ケーキ、ソフトクリームなど、今風にアレンジしたお茶スイーツが提供され、若い女性でにぎわっていた。
また、ツアーに参加した若い男性が喜んだのは、本物の銃を撃つことができる射撃場だ。初めての体験に、時間を忘れて的に集中している男性もいた。クレイ射撃場では散弾銃も体験できる。このほか、済州島では外国人はカジノを利用でき、こちらも男性の人気が高かった。参加者からは「若い世代は、海外旅行には行かないけれど、国内を中心に近くて手軽な旅行はしている。済州島は沖縄のような位置づけで捉えたほうがいい」とか「観光地や飲食店は、どこもトイレがきれいで衛生的。若い女性でも安心して旅行ができる」などの感想も聞かれた。
「食と健康」がメインのプレスツアーではあったが、参加者全員が口を揃えたのが「済州島のポテンシャルの高さ」。「料理とエステだけでは、ソウルではなく済州島を選ばせるのは難しい」との意見があり、たとえば同じ2泊3日の日程でもソウルがショッピングとエステの弾丸ツアーだとしたら、済州島はゆったりとした時間を楽しむウィークエンド・リゾートとしての打ち出しをすすめる。自然とふれあい、ほっこり和みに行くといった位置づけだ。整備された観光地、清潔なホテルやレストラン、日本人にもなじみのある郷土料理、ミドルエイジも若い世代も楽しめる豊富なアクティビティ。これらの魅力を「ソウルとどう違うのか」といった視点を踏まえてプロモーションしていくのが、今後の新たな展開につながりそうだ。
取材協力:済州島特別自治道
取材:工藤史歩